01
死んだ、と思ったら赤ん坊だったなんてこと、皆さんあります? オレはあります。ていうか、今その状態なんです。
「これが我の子か」
「はい、殿」
オレを持ち上げたのはサラサラの茶髪に鋭い目つきの少年で、歳は十五かそこらか――オレよりも年下だ。だってオレ十八だし。でもどっかで見た覚えがあるんだよな、この顔の造り。他人の空似かもしれないけど。というかオレ縮んでるの? それともここが巨人の国なの? そしてどうしてオレの体は重いの?! 視力は落ちたみたいだし、音は反響して聞こえるし――何が起きたわけ?
「萱は」
「儚くおなりに……」
「――そうか」
かや? さんがどうしたんだろうか。オレはオレを包んでる布からもぞもぞと手を伸ばして目の前の少年に触れる。あー、手が紅葉ですよ。赤ちゃんでちゅねー――マジで?!
「名は決めてある。少輔太郎だ」
それまた古風な。あまりな事件に声も出ず慌ててるオレを少年――もしかして父親?――は睨むように見て、言った。
「毛利家を子々孫々と繁栄させよ、少輔太郎」
ん? 毛利――って名字は良いんだ、別に。でも、この現代で生まれたばかりの子供にそんなこと言う父親がいるの? いるのか。ここにいるしね。きっとお金持ちなんだろうな、毛利家とやらは。普通の親はそんなこと言わんだろうし。彼はオレを近くにいたおばちゃんに渡し、命じると出て行った。
「たづ、少輔太郎を頼むぞ」
「承りましてございます」
オレは彼が出てった扉(があるだろう方向)を見ながら考えた。日本の成人年齢って下がったの? あの年齢の少年が親になるなんて考えられないんだけど。そしていつ日本は着物に戻ったんだろう。温故知新か、日本文化を再興させることで外国からのお客様を沢山お迎えするのか。なかなか出来る政策じゃないよそんなの、思い切りが良すぎだよ。歴史に残るだろうな、こんな政策通した首相。
「少輔太郎様、お父上はご政務に向かわれたのですよ」
たづと言うらしいこのおばちゃんの言葉に目を剥く。――まさか、あの少年が政務?! まだ十五かそこらだろ、おかしいだろ。それともあれか、ナウシカみたいに文明が発展しすぎて逆に退化したのか。平均寿命が低くて人生五十年で本能寺焼き討ちか。
「あー」
声を出してびっくり、オレの喉ってこんなに多い種類の音出せたんだ?! 感度が良いらしい耳は今の一音に含まれるR音や伸ばすHやLまで聞きとったぞ。なんて素敵なんだオレの耳! このままでいけばオレってばバイリンガルも目じゃないぜ!
「えー、あーゆっ!」
慣れるのだオレの耳、確か人間は慣性の生き物だとか何だとか聞いたことがあるから、この素晴らしい耳を保つためにはオレがオレ自身の声でこの耳を保たねばならんのだ! 頑張れオレ、ファイトだオレ! 将来は明るい国際人!
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