15



 清らかなお付き合いから始まるかと思えば、息を突く暇もなく結婚ということになっちゃった。展開速くない? まだお付き合いも何も始めてないよ?! 手を握ったりはしたけどキスもデートもしてないんだけど、今日祝儀を上げるって速くない?


「うう、御遣い様がやっと心をお決めになられた……風魔は安泰じゃ!」

「じいじ! 晴れの席で泣いちゃ駄目でしょ」

「螢様、長とのご結婚おめでとうございます!」

「螢様とっても綺麗ね!」


 ついでに私は御遣い様という勘違いを解けずに十年以上ずるずると引きずってる。――まあ念能力は知らない身からすれば神の技に見えるだろうし、説明しても分ってくれないだろうとは思ってたんだけどね。

 私の可愛い名付け子達が花冠をくれたりおめでとうってお祝いの言葉をくれたりするのを嬉しく受け取りながら、結婚に至ったあの会話を思い出す。私は子供が欲しいって言った。小太郎はそれを聞いて、私と夫婦になりたいって言った。つまり。


「螢様のやや子ならとっても才能ある忍になるんだろうなー」

「はやく螢様のやや子を見せてくださいね!」


 子作り。――小作り、じゃない間違えた、子作り。そりゃあ私は女性としての体はもう出来てるし、もう妊娠しても産める年齢だけど……ぽやぽやとした夢だった「子作り」の四文字が急に形を持って目の前に出てきた。子作りってことは破廉恥なことをするってことで、小太郎とそう言う関係になると言うことで。それも今夜。まだ角隠しは被ってないから自由に動かせる頭をぶんぶんと振る。頭を抱えて唸ってみる。皆から頭が痛いのかと心配された。







「前世でもコトに及んだことないのに……!」


 申し訳ないけどみんなには出てってもらって、一人で悶々と悩む。前世で異性と付き合った事もあるけど、キス止まりだったからなぁ……。ていうか高校生で破廉恥な行為に及ぶのは気が引けたというか怖かったし。せめて大学に入ってからだろうと思ってたから――うーん。

 子供が欲しいって言ったのは私で、こう言う私もお父さんとお母さんによる破廉恥な行為で生まれたわけだから夫婦が必ず通る道だし。逃げるってのは小太郎に対して酷いよね……セックスレスの夫婦じゃあまりに可哀想。諦めるほかないのか。


「仕方ない、うん。仕方ないよね」


 さっさと済ませてさっさと産めば良いのだ。生まれるなら安産でありますように! 妊娠したら小太郎と一緒に安産祈願のお守りを買いに行こうかな。ここらへんで一番大きい安産祈願の神社っていうと森戸大明神だっけ。五ヶ月目の戌の日にお参りするんだよね、確か。楽しみなような怖いような。


「時間です、螢様」


 わらわらと部屋に色々と抱えた諸姉が雪崩れ込み、化粧を整えて角隠し被せて結婚の流れを繰り返して――いつの間にか始まって、いつの間にか終わってた。感動もへったくれもなかったのはなんでだろう?


15/16
*前次#

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -