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 私は真っ白なコントローラーを握ってる。現代に帰った――わけじゃなくて、念で作った……念道具? なんて呼べば良いのか分んないや。


「アミロース値を下げてー、代わりに耐倒状性を下げればちょうど良いかな」


 アミロース値が下がるとお米の粘り気が増して美味しい。耐倒状性は読んだまんまだから説明する必要はないと思う。――今、私はお米の品種改良に取り組んでるのだ。

 皆の役に立つ能力にしようと決めた私は、発で出てきたのがゲーム用メモリーカードだったのから着想を得てコントローラーを作った。凝をした時に色んなもののスペックが見えることと育成ゲームを組み合わせて考えたのが、今の私のこのコントローラーに集約されてる。このコントローラーを使えば、色んな物の『育成』というか調整?――調律? が出来る。たとえば『積み木を上手に積める』という能力の値を低くする代わりに『文字を綺麗に書ける』という能力を高く出来たりするのだ。この能力を作ったおかげで風魔の里の皆さんからとっても感謝されてて、仕事をすることもなく趣味だけに走った生活をここ何年も送ってる。田んぼと畑を一区画借りて野菜育てるのに没頭させてもらってるし。ついでに言えば、今はついこの間収穫されたお米を前に味とか病気への強さとかを調節中だったり。全然力仕事じゃないよね。でもこの作業を何年もしてるから風魔の里のお米や野菜は凄く美味しくなったと思うよ?

 ところで。私は十五歳、達太郎は十七歳になりました。達太郎は数年前に名前を継いで小太郎を名乗る様になったから細かいことを言うと小太郎なんだけどね。もう慣れたはずなんだけど、時々ポロっと達太郎って呼んじゃうことがあるから小太郎には呆れられてると思う。もう年々恰好良くなっちゃって、それに時々私と二人だけの時甘えてくれたりしちゃうもんだからドキドキする。例えるならシベリアンハスキーかな? 顔が怖いっていうか整ってるのにやっぱり『犬』みたいな。

 先代――元・小太郎さんが時々思い出したように「小太郎と結婚しないかい?」って聞いてくるけど、小太郎は恰好良いからもっと素敵なお嫁さんが見つかると思うから断ってる。みっちゃんとかー、さつきちゃんとかー、色々? 私みたいなどこで生まれたかも分んない(木の股から生まれたんだけど)娘を嫁にするのは駄目だよきっと。小太郎もそのうち自分で好きな人見つけて来ると思うし。


「……お嫁さんかぁ」


 この時代、私の年齢は適齢期過ぎかけってのは分ってる。元々寿命が短いんだからその分大人になるのも早くなるんだって。まあ私は前世があるからいつでも結婚ばっち来いなんだけど……風魔の里って大陸からの帰化人の子孫で、身内の血を守ってたはず。私が結婚するなんてきっと無理。元・小太郎さんが小太郎の結婚を勧めてくれるのはきっと養父としての気遣いだろうと思うし。

 結婚して、家庭築いて、子供産んで。女としての幸せがこれだけじゃないってことは分るけど、私はこれが夢だった。だって私子供が大好きで、大好きで――いつの間にか風魔の里の子供たちの名付け親になってるくらいだし。九歳以下の子供の名前はみんな私が付けたんだよ! もう子供が生まれるたび嬉しくてニマニマしてた。


「赤ちゃん、欲しいなぁ」


 きっと許してもらえないだろうけどとため息を吐いて、私はコントローラーを握り直した。ええい、野菜が私の子供だ! それで良いのだ!


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