11



 恐る恐る達太郎のスペックを読んでみた。私が望めば『凝』は何でも教えてくれる――プライバシーの侵害だとかはさっぱり頭から抜けてた。

 『風魔の里所属、次期風魔小太郎筆頭候補』。


「……達太郎は将来小太郎になるの?」


 そうだ、そうだよ。すっかり流しちゃってたけど小太郎さんの名字は風魔だった、思い出した。そして達太郎は夕焼けの紅い髪。

 こくりと頷く達太郎に私は何とも言えない気持ちになる。バサラの内容なんて「戦国アクションゲーム」ってことくらいしか覚えてないし、風魔小太郎がどんなキャラだったかは「無口、腕組み、良く分んない」だからなぁ。風魔の里に入るってことは私戦国乱世に巻き込まれるんだろうな。怖いなー、嫌だなー、私はただ畑をいじって平和に過ごしたいだけなんだけど。

 達太郎が不思議そうに首を傾げてる。そう言えば質問をしてそのまま放置しちゃってた。


「じゃあ達太郎が風魔の最後の長なんだね」


 お父さんは、歴史小説と見れば買いそろえる――読書家って言って良いのか分んないけどとりあえず日本史大好き人間だったから、そのうちの何冊か私も読んだことがある。本屋が開けるんじゃないかってくらい大量にあったから見るだけで嫌気がさして、私はあんまり日本史が好きってわけじゃない。でもその読んだ数冊のうちの一冊に、風魔小太郎というか風魔の里について書かれた内容があった。徳川家康に攻められて里が滅びちゃって――そのまま消えるんだよね。

 達太郎が目を見開いて私を見つめた。私も口元に手を当てる。『最後の長』だなんて――風魔の里が滅亡するって言ってるようなもの。縁起でもないこと言っちゃった!


「達太郎、今の言葉は忘れて!」


 そう言えば躊躇した後に頷いてくれた。達太郎はお皿を下げに出ていき、私は胸元をぎゅっと掴んで失言を悔いた。


「ここはバサラなんだから、滅びるって決まってるわけじゃない……よね? 徳川が天下を取らなかったら、望みはあるよね?」


 一番はやっぱり、物凄く怪しい私を引き取ってくれた小太郎さん。地方領主かと思ってたけど忍だったなんてちょっとびっくりしたけど、転生した時点で色々と突っ込むところがあるから別にこれと言って問題視するようなことでもない。次に達太郎。無口なのか声が出ないのかは謎だけど、私の世話を文句も言わずに(文句以外のことも言わないけど)してくれて嬉しかった。

 まだこの世界に来て数日どころか二日目。二人の何を知ってるわけでもないけど、纏が出来なくて苦しんでた私を心から心配してくれた二人を私は守りたい。天下取りなんて怖いし人が殺されるのなんて嫌だし、達太郎が人を殺すのもあんまり好きじゃないけど、もし私の力で二人を守れると言うのなら――私は頑張ろうと思う。


「風魔は――私が、守る」


11/16
*前次#

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -