05*



 二日もすれば、脇差しで刺した傷以外さした大きな怪我もなかったし起き上がってうろつき回ることができるようになった。スペルビはオレを構い倒すし、情けも容赦も人の心もねぇと噂される(だいたい実話だけど)あのローンディネを見ようと斬り裂き王子が来たり守銭奴が来たり。レヴィは興味なかったのか来なかったけどな。

 スペルビの部屋でルッスーリア持参の菓子を摘みながら、くだらない話に花を咲かす。


「それにしてもあのローンディネがこんな子供だとはね。まだ十歳位じゃないの?」

「オレ、十四なんだけどな……」

「なにぃっ?!」

「あらーん?」

「へー、王子と二つ違い?」


 スペルビが勢い良く立ちあがった。ど、どうしたんだ? オレの年齢なんて珍しい話題でもねーだろ――って。スペルビに年齢教えたことなかったな、そういや。裏の世界には小二の冬に飛び込んで、小三の夏にスペルビに出会った。年々長くなる髪がなんだか厭わしかったのを覚えてる。いない人間より傍にいるオレを見てくれれば良いのにと何度も思った。


「じゃあテメーはあと四年で成人ってことか?」

「だな」

「良かったわね、スクアーロ」


 何故かオレの年齢のことでルッスーリアがスペルビの肩を叩き、スペルビも「あと四年、よし、待てる」だのなんだのと呟いてる。一体どうしたってんだろうな?


「スクアーロ、もしかして君――」

「しし、分りやすー」


 外野がやんややんやとスペルビを冷やかしてるが、オレには何のことだかさっぱり分らねー。スペルビに何か良いことが起きたのか?


「なあ、何の話してんだ?」


 水を差すようでワリーけど、話が掴めねーから困る。


「――ローンディネ、好きな人はいる?」

「何だよいきなり。まあ――いるかな」

「へー、それって誰?」

「親父とか、ダチとか、スペルビ?」

「絶望的だよスクアーロ」

「報われねーのー」

「頑張るのよっ、頑張れば必ず報われるわっ!!」


 何でかスペルビが椅子に沈み、ルッスーリアがスペルビを慰め始めた。意味分らねー。


「今回に限っては僕も料金なしで慰めてあげるよ」

「いらねーぞぉ……」

「ししっ! ふられてんの」

「うるせぇクソ王子」

「スクアーロもこれから大変ね」

「うっせ」


 理由は分らねーけど、どうやらスペルビが嘆いてるってことは分った。オレは近寄ってスペルビの頭を撫でる。クシャクシャにするんじゃなくて流れに沿うように何度も往復させる。


「あらっ」

「何で沈んでんのかは知らねーけど、元気出せ?」


 スペルビの両腕ががばりと開いてオレを抱き込み、ギュウギュウと絞めつける。仕方なしに後頭部をさわさわと撫でるとスペルビの肩がピクリと揺れた。


「フゥ……お邪魔虫は退散するよ」

「後で結果聞かせてねぇ?」

「つまんねーのー」

「こらベルちゃん、そんなこと言わないの」


 一体何がどうしてそんなこと言われたのか分らねーけど、どうやらオレがスペルビを慰める係らしい。オレの胸に顔を埋めたスペルビの腕がゆっくりと動き出す。上下に。


「お……おい、スペルビ?」

「もう我慢できねぇ」


 もごもごという声が聞こえ、スペルビの手が――オレの尻を揉みだした。


「え、ちょ?!」


 慌てて両腕を振り回すオレを見上げ、スペルビはちょっとイった目でオレを睨みつけた。


「好きだぁ!! 黙ってオレに抱かれろぉ、ローンディネ!!」

「は?!」


 スペルビが俺を抱きしめたまま立ち上がり、ドカドカと歩いてオレをベッドに放り投げた。怪我がピリリと痛み顔をしかめた一瞬でオレの上に覆いかぶさると、そのまま――オレにキスをした。


「な、どうゆーことだスペルビ!」

「今、テメーが好きだって言っただろぉがぁ!!」

「それがどうしてこうなる!」

「好きだから抱きてぇ! どこがおかしい、言ってみやがれぇ!!」

「え、え――?!」


 その後はキスで塞がれて、そのまま流された。えー?




5/10
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