01



 そろそろだ――そろそろ。もうすぐ、アイツがやって来る……!


「う゛お゛ぉい!! なんだぁ? 外野がゾロゾロとぉ。邪魔するカスはたたっ斬るぞぉ!!」


 ツナに枯れ葉色の髪をした少年が体当たりするようにぶつかり、巻き込んで倒れる。起き上がる少年、現れる銀髪の男――来た、来た来た来た来た!! この日をどれだけ待ち望んだか! 声に導かれるように顔を上げれば、闇色の隊服に身を包んだ彼が立っていた。


「――スペルビ!!」

「あ゛あ?」


 満面の笑みを浮かべて見上げれば不審そうに顔を歪め、誰だテメーと怒鳴ってきた。


「ひでーなスペルビ、お前をこう呼ぶ人間なんてオレしかいねーだろ?」

「山本、危険だよあの人!! 斬り殺されるよ!」


 小三の時には世界を渡り歩いていた。どうせ一度卒業した義務教育だ、休んだところで痛くもかゆくもなかったからな。そしてイタリアで会ったのが――スペルビ・スクアーロ。オレの兄貴みたいな男だ。


「もしかしてテメー――ローンディネかぁ?」

「そーそー」

「山本が怖い人と普通に話してる――?!」


 ローンディネ、燕――原作の山本の技から取った。裏に潜ってすぐ知り合ったスペルビ・スクアーロはまだ餓鬼だったオレにも優しくて、憧れた。ちっと声がでかくてうるせーけど、オレには良い先輩だ。


「ローンディネだと……?! 山本、テメーがあのっ?!」


 獄寺が目を剥いてオレを振りかえった。事あるごとにつっかかってくる獄寺は去年までイタリアにいたストリートチルドレンだ、オレの名前を知っててもおかしくねー。


「そ、オレがローンディネ」

「それならローンディネ!! その餓鬼を捕まえとけェェ!!」


 ニカっと笑えば獄寺の顔がサッと青くなった。そりゃあ、ローンディネの噂で耳に心地良いものはねーからなぁ。尾ひれ背びれがついてるとは言えほとんどが実話だ、オレは情け容赦ってもんをしらねー。


「あ、そりゃ無理だわ」

「う゛ぉぉおい?!」

「だってオレ、今スペルビとは一応敵対関係みてーな? この枯れ葉頭の奴保護しねーといけねー立場っぽ」

「いきなり雰囲気が悪くなった――?!」


 さっきからツナが可哀想なくらい顔を真っ青にしてっけど、数カ月ぶりの義兄弟の再会だぜ? どこに問題があるってんだ?


「……その立場ってのはどういうことだぁ?」

「ん、秘密?」

「山本ぉぉぉ?!」


 笑顔で首を傾げればツナが悲痛な悲鳴を上げた。だって嘘ついてもどうせばれるし。それなら言えねーってった方が良くね?


「ハ! そっちについてどんな利益があるのかはしらねぇがぁ! ローンディネ、テメーもこっちに来い! オレはいつでもテメーを歓迎するぜぇ!」

「いや、無理っぽ」

「ローンディネェェェェェェ!!」


 視界の端でリボーンが何事かブツブツ呟いてるみてーだけど、そこはまあ――気にするほどのことでもねーな。獄寺は残虐非道なローンディネの噂を思い出してか血の気の引いた顔でしゃがみこんでっけど。オレが殺して来たのはどーせ漫画に名前もでてこねーようなザコキャラだろ? それを鱒切りにして何の問題があるってんだ?


「だいじょーぶだいじょーぶ、ツナ。オレはお前を裏切らねー」


 顔を赤くしたり青くしたりで忙しいツナの頭をポンポンと撫でながらボソリと呟く。――この役立たずが、何でおれがスペルビの注意を引いてる時に逃げ出さなかったんだ? 髪の色だけじゃなくて頭ん中も枯れてんじゃねーの?


「すみません沢田殿、つけられてしまいました――」


 そう言ってツナの手を取り逃げ出そうとする枯れ葉野郎。馬鹿か、何でツナまで連れてこーとすんだよ。


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