未来のためにこんにちは



 バイクは進むよどこまでも。クルタ族の隠れ里は私が借宿にしてた場所からバイクをとばして二日と半日の距離にあった。つまりギリギリってことですね分かります。クルタの襲撃は三日後ですよ急げってことですね分かります。

 ところで。まだ若いとはいえ相手は幻影旅団の皆さんだからガチンコバトルは遠慮したい。できれば一生かかわり合いになりたくなかったというのが偽らざる本音だけど、正義の味方である限り嫌がおうでもかかわり合うこと間違いなしだから切ない。あーあ、職業ハンターってのはあるのに、なんで職業正義の味方ってのはないんだろ。みんなの平和を守ってるんだから成功報酬くらい出れば良いのに、本当に割に合わないよね……。

 どうせ砂漠だからよそ見運転しても良いよね。ポチポチとアドレス帳を開いてクロロに電話をかける。ついでに登録名は裸コート。他の登録者は旅団の皆さん。寂しい。


「ヘロヘロー」

『誰だ』

「こちら正義の味方よ」

『ああ、お前か』


 電話越しだからか声が分かんなかったんだろう、鋭い声で訊ねてきた。画面見れば誰からの電話か分かるでしょうに。


「突然ごめんね、今話して大丈夫?」

『問題ない。どうした?』

「そりゃ良かった。確認したいんだけど、クロロ、今世界三大美色狙ってるでしょ」


 私がそう言うと電話の向こうから不穏な空気が漏れてきた。器用だねぇ。そしてビシバシと殺気を滲ませた声が答える。


『どこで知ったんだ……? どこから買った』

「情報屋から買ったわけじゃないない、そんな金もない。念よ念念、私の念能力」

『ほう』


 クロロの野郎、盗る気満々か。一気に機嫌治したばかりか嬉しそうだ。こっちは自分で自分の言葉に凹んでるってのに。


「神様テレビっていって数日中に正義の味方の助けを求める運命にある人間を映してくれるんだけど、そこに金髪碧眼の少年が映ってね。少年の周囲はもうまさに死屍累々といった様子で、それも死体に目玉ないの。目玉といえばクルタ族でしょ。いくらクルタ族が小さな民族といっても弱いわけじゃないからさ、そこらへんの賊なら追い払っちゃうだろうし――クロロ珍しいもの好きだし。犯人はお前だ! と思ったのだよ」

『――流石は正義の味方だな。その通りオレたちは三日後クルタ族を襲撃するつもりでいる』

「止めろと言って――」

『止めるようなオレたちではない』

「だよねー」


 正義のためにしか使えないことを言えば小さい舌打ちが聞こえた。やっぱり盗る気だったのか貴様。


「というわけでさ、私は正義の味方としてクルタ族の滅亡を阻止しなくちゃいけないからよろしく。ついでにクルタ族を襲うなら、後腐れのないように生き残りを出さないように」


 そう言えば、電話の向こうでため息を吐く気配がした。


『……クルタ族を守りたいのか滅ぼしたいのかどっちだお前は』

「守れるなら守りたいけど、クロロたちの命も惜しいんだよ」

『オレたちが死ぬとでも?』

「いますぐじゃなくても、いつか必ず誰かが」


 だいたい生き残りを見逃したクロロたちが悪い。私は一応正義の味方だけど、悪と仲良くしてはいけないわけじゃない。気に入った人間を優先して何が悪い。良かったねクロロ、正義の味方が友達で。


「じゃあ三日後、クルタ族の隠れ里で会おうね」

『――ああ。事後聞きたいことがある、逃げるなよ』

「……えぃ」


 私は返事をせずに通話を切った。きっと神様テレビのこととか私のプライバシーとか聞くつもりに違いない。そんか恐いことできないから却下。

 早く次の宿に着かないかな……もう今日は疲れた。









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 優歌ちゃんって正義の味方じゃないね。
05/22.2010


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