長い道程よこんにちは



 自分の発言には責任を持ちましょう。下手な言い訳、言い逃れをすると傍目にみっともないから。


「待てっ」


 ヒーローなら助けに来い、と考えたのは私なんだし。もし私がヒーローになったなら、私が助けなきゃいけないでしょ。


「その子を離すんだ!」


 バイクのエンジン音に負けないように大声で怒鳴り、ヒーローらしく登場する。ついでに今回のヒロインなお嬢さんを取り囲んだ敵たちは見るからに悪役然とした人たちで、近くの町の小金持ちの娘さんであるこのお嬢さんを拐かして身代金をせしめようとしているのだ。何で知ってるかって言えばヒーローだから――てのは冗談で、ヒーロー業を始めるに当たって神様テレビもどきを具現化したのだ。数日先のほぼ確定された未来が見れる優れもので、これで身の危険が迫っている方々を見ることが出来る。具現化系に能力を特化させたからこういうこともできるんだよね。一応ほかの系統も使えるけど、具現化以外は修行一切してないからさっぱり。


「なんだテメーはァ!」

「降りてきやがれ!!」


 ヒーローと煙は高いところがお好き。私は崖の上からこの場合の敵を見下ろす。お嬢さんは――離れた場所で木にくくりつけられてる。これならちょっと無茶しても大丈夫だよね。


「そんなに降りてほしいなら降りたげる!」


 私はハンドルを握り、捻る。唸るエンジンに一瞬で時速ウン十キロを越えるバイク。崖からバイクごと飛び降り、途中でサドルを蹴って逃げた。敵に突っ込むバイクは凄い爆音をたてて火柱を上げ、私はお嬢さんの前に着地した。ついでにバイクを突っ込ませるのは私の十八番だ。スマートな方法だと思う。乱闘にならないから私が怪我することもないし。


「大丈夫、お嬢さん?」

「あ、はい……有り難うございます……?」


 フルフェイスの怪しげなヘルメットっぽいのをかぶり肌の露出が全くない私。怪しいよね。腰から抜いたナイフで縄を切り、お嬢さんを助け出す。それにしても、私人を殺すのに良心の呵責がなくなってきたなぁ。悪人しか対象にしてないって言えばそうだけど、殺してるのには変わりないしなぁ。と。車のエンジン音がして、炎上するバイクの近くに黒塗りの高級車が止まった。行き道ストーカーしてきた車だけど、一体どんな用があるんだか。


「おーおー燃えてら」


 車からでてきたのは、数ヶ月前まで紙面の向こうに見てきたキャラクターだった。マチ! フィンクス!――クロロもいるの?!


「思い切りが良いな、あれほどのバイクだ――つぎ込んだだろう?」


 クロロがサクサクと近寄ってきて、火柱をチラリと見てから私に笑んだ。満面の笑みとはほど遠くニヤリといった表現が一番合うけど。


「いや……」


 まさか幻影旅団のボスに「私具現化系なんだ☆」とか言えるはずもなし。苦笑するのに止めておいた。ていうか、何で旅団が私をストーキングしたわけ?


「近くで見られれば良かったのだが」


 クロロは切なそうに上がる火柱を振り返った。あー、あれが欲しかったのね。てか、盗む気だったんだろうな。あれは私の具現化した物質だから私が持ってなきゃそのうち消えるよ。


「それはごめんね。あれが一番楽な方法だったの」

「…………おまえは男、だろう?」

「心は女よ」

「そうか」


 クロロは納得したようなしてないような顔をした。ジンさんにも「変身中のおまえはどう見ても男にしか見えない。傍目にはオカマに見える」って言われたからなぁ。きっと私をオカマさんだと思ってるに違いない。そう思われるように答えたし。その方が変身ヒーローっぽいし、日常生活で旅団に絡まれて苦労生活送りたくないんだもん。







 なぜか私を気に入ったクロロとフィンクスに無理やりアドレスを奪われ、(champion-of-justice@云々、というアドを見てフィンクスが一瞬固まったけど。仕事用だもん、普段からそんなメルアド使ってないもん)その場は無事に分かれた。それにしてもさ、クロロさんよ。君たち車なんだから「親友、近くの街まで送って行くぜ」とか言ってくれないの? 私歩きだよ? 一回変身解いてまた変身しないとバイクは出てこないんだよ。小さいとはいえ重たい(このお嬢さんには失礼かもしれないけど)人間をかついで街まで行くのだるいよー、いや、だるくはないけど面倒だよ……。体力と筋力だけはジンさんの修行で鍛えたから良いんだけどね。あー、ヒーロー業面倒くさっ。














あまりヒーローらしからぬおねぇ様。恰好良いことしていながら脳内はこんな感じ。
05/13.2010

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