辛い修行よこんにちは
時間は少し遡り。
だんだん慣れてくるとジンさんとの間も柔らかいものに変わっていった。初めは――うん、酷かった。私を電波系だと思いこんでたんだろうジンさんは引け腰で目が泳いでた。てか、私がライダースーツ着用のままだからなんだけど。脱ぎ方が分からないんだよ。ついでに言えば今でも脱げてないよ。
「よう優歌! 今日も天気だ、修行すんぞ!」
「はい、ジンさん。ところでもう朝ご飯食べました?」
「いや、まだだ」
じゃあどうぞ、とナンもどきと昨晩の残りの肉、そこらへんに生えてた雑草を渡す。雑草って言っても食べられるんだからね、ただ「そこらへんに生えてる」から雑草って言ってるだけで。ナンもどきの柔らかい内側に切れ目を入れてお肉と雑草を挟み、ケバブみたいにして食べる。
「味付けがちょうど良いな。こんなの食ったのはいつぶりだろうな」
「そんなこと聞かされると、ジンさんが今までどんなの食べてたのか気になるんですけど」
「適当に作って適当に食ってきたな」
「いわゆる漢の料理ってヤツね……」
「ん? 何言ってんだ、優歌も男だろうが」
私は否定できずにため息を吐く。今の私の見た目は間違いなく十人が十人男だと思うだろう体格で、声も低いし力もある。――まるきり男なんだよねぇ。こんな見た目で女だって言っても信じてもらえないだろうし、というか信じる人なんていない気がする。ここがジャポンだったら女の名前と認識してもらえるんだろうけど、ここはジャポンでもなければ人里でもない、それどころか、ここがどこなのかジンさん自身にさえさっぱり分からない場所だからな――。
「まあ、うん。それは置いといて。今日は何するんですか?」
「オレと競争だ!」
ニコニコと言い切るジンさんに頭痛を覚える。仮面越しに眉間を揉んだ。
「競争ですか? でも今競争したところで私が惨敗するだけでしょうに」
「いいや、おまえならイケる!」
「はあ」
その日は一日中ジンさんと競争した――というか、ジンさんを必死に追いかけたっていうのが正しい。うん、ここに来た時と比べて段違いに私の体力と筋力は向上した、けど、ジンさんにはまだ敵わないなぁ。
私が正義の味方を名乗るようになるまであと半年。
初めは遠慮がちなジン氏。勢いで頷いたけどあまり乗り気ではなかったようです。 05/13.2010
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