ナイスミドルとこんにちは
ヒーローがいないなら私が倒せば良いじゃない。って、マリー・アントワネットか私は。なんだか軽い体を操って「ライダーキック」だの「ライダーパンチ」だのといいながら殴る蹴るの暴行を与えた。他人の目がないと大声出すのが恥ずかしくなくて、もの凄く良いストレス発散になった。もう最後らへんになるとライダーキックとか言うのに飽きてきて「アチョー」とか「ユワッショーッ!」とか言った。
「ふぅ、つまらぬものを斬ってしまった・・」
決まった……! 我ながらもの凄く格好良い! 気を失い倒れ伏した恐竜に安堵のため息を吐いてからそう自己陶酔してると、森の中でも比較的私に近い木の中からガサガサという音がした。見上げると楽しそうな顔をした中年男性が葉っぱの中から顔を出してる。中年といっても脂が乗った一番元気な時期で、働き盛りのサラリーマンといった年齢かな?
「おまえ面白いな!」
男の人は地上十メートルはあるそこからピョーンと飛び降りると私の目の前に立った。凄いなぁ、さっきまでの私も似たような感じだったけど、他人がしてるのを見ると感心する。
「オレはジンだ。ジン・フリークス! お前は?」
「ああ私は…………って、ジン? ジン・フリークス?」
「そうだ。オレの名前知ってるってことはお前もハンターなのか?」
私は思いだした。そういえば、私は春樹の怪しげな液体のせいで魂と体が分離して死んだんだった。それで春樹のお父さんだって言うなんだか不安なおじさんに会って、それでハンターハンターの世界にとばされちゃったんだ!
「あのクソジジイ私を殺す気?! 殺したいの?! 落とすならもっと安全な場所に落としてよ!」
「あの、おーい」
頭を抱えてフルフェイスのメットをかきむしる。ジンが声をかけてくるけど今は無視!
「――ん?」
地団太を踏んであのヒゲを罵ってたら、空からヒラヒラと紙片が落ちてきた。目の前にヒラリと落ち、なんだか気になって拾い上げれば何事か書かれてた。
『ハロー、春樹のお父さんだぞ☆ お嬢ちゃんが死なないために修行を付けてくれそうな人のところへ送ったからその人に面倒見てもらえば良い。そこで生き抜くんだったら念も必要だろうと思ってとびきり強力なのを付けといた。頑張れ、応援してるぞ』
「キシャァァァァァァ!!」
「おい、どうした?!」
「草場の陰からでも応援してやがれあのヒゲェェェェ!!」
紙をビリビリに引き裂いて地面を殴りつければ大きなクレーターが出来た。少し気が晴れる。
「ハァ、ハァ、ハァ――ジンさん、ですよね」
「あ、ああ・・」
ドンビいてのが分かるから何とも言えない。ジンの顔はこれ以上なくひきつってる。私だって好きで反狂乱になったわけじゃない、それもこれもあのヒゲのせいなんだから。
「私は優歌と言います。――弟子にしてください」
「あ、はい」
どうしてかジンさんは敬語だった。何で?
いくらジンといえど、電波系には引くかと。電波じゃないけど。 05/12.2010
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