ボディースーツよこんにちは



 完璧に寝入ってたらしい私は、背筋を這い上る悪寒に目を覚ました。吐き気がしそうなくらい気持ち悪い。というか吐きそう。


「う……ここ、どこ」


 起きてすぐ思い出したのは笑い方が微妙にキモい友人の顔。冷たいはずなのに沸騰してる摩訶不思議な危険飲料を押し付けてきたことと、味がこの世の終わりくらい不味かったこと。


「あのキモ男、絶対絞めてやる……」


 何故道で倒れてるかなんて考えなかった。立ち上がりスカートについた砂を払って、ようやっと現状を把握する。目の前には広大な森が広がってて。さっきまでいたはずのコンクリート製校舎は姿形なく。背中の方からするはあはあと荒い呼吸音にまさか不審者かと振り返れば――目をギラギラと輝かせた恐竜もどきが口を半開きにして涎を垂らしていた。


「っひ?!」


 こんなにも大きければ、自分など食後のデザートちっちゃいカプリコだ。


「……食べても美味しくないよー?」


 捕食者の目をして私を見下ろす恐竜に恐々言う。相互理解は不可能らしい。妙にドキドキと早鐘を打つ心臓に対して頭は酔いそうなくらい回転してて、「恐い」の文字が何度もリピートされた。


「う……だれ、か」


 恐竜が口を大きく開いたから、その不揃いの歯並びも赤い口内も良く見えた。固まって動かない口はカラカラに乾いてざらざらして、ようやく絞り出した声も掠れてる。


「誰か、助けて……」


 でも人影なんてさっぱりないし、恐竜にそこら辺の人が勝てるはずないし、私の死は確定だ。あれ? なんだかムカムカしてきた。こういう時はどこからかバイクに乗ったヒーローが現れて颯爽と一般人を助けるものじゃないの?! 働けよヒーロー! ここで恐怖に身を震わせてるか弱い女性がいるんだぞ、助けに来てよ! ポーズキメて


「変身っ!!」


 とか言ってさ! と、――周囲が明るく照らされた。私が発する光によって。


「へ?!」


 気づけば私は車並みに重量のあるだろうバイクに跨がり、全身を覆うスーツに身を固めて立っていた。


「――へぇぇぇぇ?!」


 拝啓、春樹の糞野郎。私、ヒーローになったみたい。











人間、限界を突破すると思考が飛翔します^^ようするにブっとびました。そして名前変換がまだ出ない……
05/12.2010


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