初めましてこんにちは



 友人作・原材料不明の青汁っぽい流動体を飲んだ、と思ったら。私はひたすら闇の中を滑っていた。呆然としながらいつ終わるのかも分からない滑り台を下り続け、クッションの山に落ちて落下が終わった。やわらかいそれの上を軽く跳ねて着地しハっと正気付く。ここはどこだろう……? ぼんやりと明るい白い部屋には木製の机と椅子があるだけで他には何もない。まあ、私を受け止めたクッションがあるからそれだけって訳じゃないんだけど。とりあえずここがどこか確かめるために立ち上がり、机の上にある手紙らしき紙を見れば――


『親父へ。マジでごめん。うっかり親友の魂と体を分けちまった☆ オレに免じてなにか償いしといて☆ by晴樹』


 どうしてだろう。この筆致に見覚えがあるのは。どうしてだろう。差出人の名前を何度も呼んだ覚えがあるのは。


「お嬢ちゃん」


 そう声をかけられて振り返れば、親友にそっくりな顔立ちをした中年男性。無精ひげが怖い。


「は、はい……」


「話があるんだ、座ってオレのいう話を聞いてくれ」


「はあ」


 私の友人の晴樹は実は神様の息子で、現在人間界で修行中なんだとか。自分が作るものがどんな影響力があるのかもまだ理解しきれてないまま私に自作ドリンク――ある意味で魔法薬だと思う。特に味とか。――を飲ませて失敗した、と。私の体が死んでからもう七時間以上過ぎちゃったのでもう生き返ることもできないとか。なにそのラッキーナンバー。


「あいつはオレが叱っておく。お嬢ちゃんにはすまないが、もうあの世界にはお嬢ちゃん本人として蘇ることはできねぇんだ。昔なら神の奇跡とか言って三日後に復活させるとかいう無理もできたんだが、今の世の中じゃお嬢ちゃんが蘇ったら実験室行きになっちまう」

「なんだかとってもリアリティーがありますね」

「まあ、時々してるからな」


 つまりそれって、誤って殺しちゃった人が何人もいたと言うことじゃないの? なんだか神様って不安だ。安全面に物凄い心配があるんだけど。


「ということで謝罪の気持ちだ、いくつか願いを叶えよう。最近じゃ異世界に行きたいって子が多いな」

「日常茶飯事か」


 トリップしたいな、とは思ったことがあるけどそれはだいぶ前の話で、今はもう落ち着いてる。キャラソンとかアニメ見るだけで満足してるんだよ。


「じゃあ、今度の生は何があっても死なないようにしてください。理想の死亡原因は老衰です。願いは特にありません。あ、でもちょっと頭の回転が良くなったら嬉しいな」


 天才じゃなくて良い、美人じゃなくて良い。とりあえず、死にたくない。死なないことが前提条件だよ。


「ん、じゃあ移動先はどこでも良いな?」

「はい」


 晴樹によく似た顔がニッコリと笑った。


「じゃあおじさん大奮発しちゃおう! 移動先はお嬢ちゃんの大好きなハンターハンターだ!」

「――は?」


 次の瞬間、私はまた滑り台を滑っていた。私の悲鳴を聞きながら、おじさんが呟いてた言葉なんて聞こえたはずもない。


「まさか願い事が一つだけで良いなんてなぁ。欲がない子だ。晴樹も良い子を見つけたじゃないかはっはっは! いつか嫁さんに来てくれんかな」


 いつの間にか嫁入り先がほぼ決定してるとは知らず、私は胸中おじさんを罵っていた。あのジジイ、ハンターハンターって危険すぎるだろチクショーめ!










楽しかったので連載になるかもしれない。それより先にぐるぐる書けよと怒られる気がします。波があるのよ、ビックウェーブが来ないんです! と言い訳。
05/11.2010

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