美少年にこんにちは
今私は墓穴を掘ってます。私の必死の説得が功を奏したのか目を抉り盗られちゃったのは十人足らずで、クルタ族滅亡にはならなかった。良かったねクラピー。
「あいつらに復讐を……復讐して、同じ目に遭わせてやる!」
クラピーが目を真っ赤にしながらスコップを地面に突き立てた。大人の多くは傷付き伏せっているから、今動けるのは守られていたクラピーやクラピーより年下の子供たち、私――というとっても不安な人員のみ。
怒りをぶつけるように穴を掘りつつクラピーはおどろおどろしいオーラを発散する。チビたちが怖がってるよ……。
「クラピカ、皆、ちょっと休もうか」
穴なんて子供が掘ってるとはいえ三時間もあれば十個なんざ軽い軽い。一時間ずっと掘り続けてお疲れ気味のチビたちを休ませるのと頭に血が上ったクラピカとゆっくりお話するため、手を止める。
「みんなは休んでおいで、疲れたでしょ? あとは私とクラピカがするから」
穴はあと四つ。今日中に終わるね。
チビたちを離し、私はクラピカに話しかける。
「クラピカ、復讐なんてのは止めた方が良いよ」
「クラピカ、復讐なんてのは止めた方が良いよ」
優しい――悪く言えば女々しい話し方の男が、スコップを杖のように突き私を見つめながら言った。
「何故……!」
「復讐は何も生み出さないから。生み出すとしても負の連鎖だけよ」
どうせ部外者、私達の仲間が何人殺されても痛くも痒くもない人間――そんな立場の男に言われる筋合いはない。私は優歌と名乗るこの男が嫌いだ。
「貴様に説かれる筋合いなどない。私は一族を襲った奴等に復讐し、クルタの強さを見せつけてやる……!」
思わず熱くなった。
「奪われた者には奪われた気持ちは分からない。貴様も一度奪われれば分かるだろう」
言っているうちに優歌が憎くなってきて、当てこすりのような言葉を吐いていた。とたん流れる視界、痛む頬……私は殴られたのか?
「クラピカ……貴方、世界で一番自分が不幸だとでも思ってるの? 貴方以上に苦しんでる人間なんて五万といるわ、被害者面されると凄くムカつく」
「……ならっ! 貴様は何を奪われたと?!」
後から考えればこの時の私は頭に血が上り、ストレスを発散するための対象を探していたように思う。世の中は優しいばかりではないことを知らない子供だった。
「私が持ってるものはね、この身一つだけよ。出身地もない、戸籍もない、親も家も金もない。この意味が分かる?」
知らない、そんな境遇なんて、知らない。
バッタのような仮面を付けた男が、どうして何もかもなくしたかだなど――私の想像を越えている。村ごと滅ぼされ、死んだ者と見なされているのだろうか? 生きていると知られたら殺し屋がくるのかもしれない。だから仮面を付けているのだろうか。
彼は私よりずっと奪われたのだ。そしてそれを踏まえた上で復讐を止めろと言っている。
「……なら、私は何をすれば良いというんだ。教えてくれ」
復讐を止めろと言うのなら、どうしろと言うんだ。
「今度は襲われないように、奪われないように強くなれば良い。クルタ族にクラピカありと世に知らしめて、犯罪者たちを追い払えば良いのさ」
だがそれでは殺された皆が浮かばれない。
「馬鹿ね、なんでこの人たちが死んだと思ってるの」
「それは殺されて――」
「違うわ、貴方たちの命を守るために死んだのよ。その命を大切にしないでどうするの? 復讐して相討ちになって死ぬよりも、仲間を守るために死になさい」
それがこの人たちへのお返しになるんだから、と優歌は言った。
「強くなれば……守れるだろうか?」
「もちろん」
「――そうか」
憑き物が落ちた気分というのだろう、私の心は軽くなっていた。ついさっきまでドロドロと暗く濁っていたのに。
「強くなったらまた、私と会ってくれないか」
「良いわよ」
いつかまた、と約束を交わす。
「その時は、貴方の仮面の下を見てみたいな……」
「え?」
「いや、なんでもない」
いつかまた、優歌に会えると信じて――。
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はいっ、意味不明! 夜に書いたのでテンション微妙。とりあえず眠い。 06/01.2010
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