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やって来たのは火影の屋敷っていうか、私んち――の、地下。火影とその家族が暮らす区域とは全く分けられてるから誤って迷い込む心配はないみたい。にしてもこんなとこに隠し扉があったなんて、十年住んでる私が今まで気付かなかったんだから本当に凄い。
「バラバラになりたくなかったらオレの足跡を踏め」
ななしの暗部さんはそう言って廊下を進み始める。私の歩調に合わせてか暗部さんはゆっくり進んでくれた。
「これからお前を暗部のツートップに会わせる。くれぐれも失礼のないように振る舞えよ」
いきなりクライマックス! 暗部のツートップって誰、怖い人じゃないよね……? 背筋がなんだか寒くてぶるりと震えた。暗部さんは私を安心させるように優しく言う。
「そう不安にならなくて大丈夫だ。お前の今の実力を見るだけだからな」
なんていうか、それが逆に怖い。実力を見るってどういう風に? 肉弾戦? 殺気のむしろ? どっちにしろ精神衛生によろしくないよね!!
「ここだ。――総長、参謀、紅狼です」
「入れ」
しばらく歩いてある一室の前で立ち止まる。うう……だんだん視界が滲んできた……。だって私みたいな逃げ専が爪楊枝ならこの扉の向こうにいるのは木刀。逃げる間もなく死亡だよ。残念無念、また来世☆ とか冗談にならないよコレ。
「失礼」
名前も知らない暗部さん、恨むわ……って、苦労だなんて不幸な名前で可哀想。
変化で成長した姿とはいえ、紅狼の背中にすっぽり隠れてしまう小ささ。黒髪に黒い瞳、少し色を無くしているが普段は赤いだろう頬……。
「猿飛木の葉です、よろしくお願いします」
紅狼に背中を押され前に出た少女はそう言って頭を下げた。木の葉、やっぱり木の葉なのか。――もう八年も前の事だ、二歳だったこの子がオレのことを覚えているはずもない。と、紅狼が木の葉の頭に手を乗せた。
「こいつはまだ発展途上だが将来性がある。それと――」
オレは八年も木の葉に触れられなかったのに、気安く木の葉に触れやがって……紅狼、死んでも文句言わせねぇ……。木の葉に分からないように殺気を微かに溢せば黒龍がオレをちらりと見遣った。言い訳は後でするから黙っててくれ。
「ん?」
一瞬で紅狼の手の下から木の葉が消えていた。廊下まで下がり、オレを恐怖に引きつった顔で見ている。
「それと、木の葉は気配を読むことに関してならそこらの上忍を遥かに上回る。殺気なら言わずもがなだろうな」
紅狼が肩を竦めながら言った。馬鹿、それを早く言え! それとオレが殺気を向けたのはテメーだ!
「木の葉だっけか? 怖くないからこっち来い、飴食うだろ」
やるから来な、と黒龍が手招きするのに従い木の葉はおずおずと部屋に入ってきた。黒龍の影に隠れるようにピタッと貼り付いている。
「金狐、とりあえずその殺気仕舞え面倒くせー。こいつが怖がってんだろ」
黒龍にたしなめられ、詰まる。――いや、紅狼が悪いんだ紅狼が。全ては紅狼のせいだ。だから木の葉、黒龍にくっつかないでくれ!!
04/16.2010
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