今生では、両親に望まれて生まれてきたのではないとすぐに分った。赤ん坊の反響して聞こえる聴覚、それでもオレの耳はその声を拾った。


「生まれてきたのは男――分るね、アイリーン」

「は……はい」


 なんや、また英語圏か、と思ったオレは次の言葉に耳を疑った。


「あの子が私とは縁を切り、マルフォイ家の子となることは分っています」

「納得してくれて嬉しいよ。ではこの子はもらって行く。援助はそうだな、君の息子がホグワーツを卒業するまで不自由なく暮らせるだけ渡そう」

「はい」


 なんだか嫌な単語が聞こえてきたんやけどな、気のせやろか。マルフォイ、ホグワーツ? ハリポタ? え、まさか今度は魔法世界なん?

 内心眉根を寄せて唸る。――と、オレの頬を突く指があった。うぜえ、誰やねんと思って目を開ければ黒髪の少年がオレを見下ろしていた。四歳か五歳か? 悲しそうな目でオレを見ている。


「――そうだ。命名くらいなら君にさせてあげても良い。これと言う名はあるかね」


 男の声が無感動に響く。目の前の少年はオレの顔をマジマジと見ている。「黄色……」とか呟いているが、一体何が黄色なのかさっぱり分らん。


「なら、ならば、ジュリアスと。ジュリアス・マルフォイと」

「ジュリアスね、分った。ジュリアスは私が責任もって育てよう」

「有難うございます、Mr.マルフォイ」

「我が君の命さ」


 前世はユリウス、今度はジュリアス――ドイツ語読みから英語読みに変わっただけやん! まあ、勘違いせーへんで済むからええねんけどな。にしても捻りの欠片もない名前やな、オレに皇帝になれってか? 目をつぶって据わらん首を振ろうと力むも全く動かず、むーむー言ってるうちに足音が近寄りオレを抱き上げた。驚いて目を見開く。


「大人しい赤ん坊だな――いや、生まれて二日目とあればこのようなものか?」


 男は少年を見下ろし、ふっと笑った。


「では、失礼」


 パチン! という破裂音と共にオレはパイプの中を滑らされる苦行を受けた。これって姿現しやなかったっけ……吐きそうや……なんやこちゃ、ホンマ、死ぬ…………。


「ジュリアス!? そうか、赤ん坊には大変だったな――ホフマン!」


 男が怒鳴り、襤褸衣まとった妖怪が突然現れた。耳はダンボ、目はテニスボール、肌は日焼けサロンに通うギャルより濃く黒っぽい。これがかの屋敷しもべ妖精か。生で見ると可愛くないな。


「はい、旦那様!」

「ジュリアスを休ませる――ルシウスの時の寝台があっただろう」

「ジュリアス様、で?」

「この子だ。今日から私の息子になる」

「分りました、今過ぎ用意致します!」


 ふにゃふにゃとしか言えないオレを抱いた名も知らぬ紳士は何故か抱き方が上手く、据わらないオレの首もちゃんと支えられて息苦しくならない。意外と育メンらしいことにびっくりやわ。

 そして一時間後オレは義母とルシウスなる義理の兄貴に会い、ルシウスって原作のドラコ・マルフォイの父ちゃんじゃなかったっけと遠い記憶を漁った。――えっと、原作何年前?













 ダブー、と喃語でこんにちは、ユリウスことジュリアスやでー。まさか今度はハリポタ世界にinとは思いもよらず、気づいた時には驚き・桃の木・山椒の木。英語で言うならマーリンの股引。

 なんか生まれてすぐから怪しげな空気が漂っとるけど、オレはちゃんと育つんやろうか? それだけが心配……繊細なジュリアス君やもん、お義兄ちゃんにいじめられたりなんかしたらピーピー泣いちゃうわっ。

 次回、サディストはとても狡猾お楽しみに☆ 時間が飛びすぎ? それはこの呪文で一発解決や――キングクリムゾン!


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0801.2011






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