ユリウスが考えた通り、次の朝の紙面には確かにエキセントリックの活躍が載った。しかし第一面であるはずエキセントリックの中央を飾る花形記事に対し、16・17Pの見開き一枚使った新聞広告は負けず劣らず目立っていた。二ページにわたるフルカラー、広告費はさぞかし高くついたであろう。どこが出した広告かと思えば会社の名前はラルフローレン、ポロをしている姿がマークの服飾メーカーである。


「エキセントリックを会社のイメージキャラクターにしたい、なぁ……」


 ネットによれば、どうやら昨日のHERO-TVを見た支社長が「あれ、うちのスーツ!」と気が付きすぐに役員会議を開いたそうな。社長の説得と一部の役員がHERO-TVのファンであったことからこの案は満場一致で可決され、次の朝の新聞にこんな広告を載せるに至ったとのこと。役員の一人がTwitterにそう書きこんでいるのを読んだユリウスは長嘆息した。ばらして悪い情報ではないからこそ流したのだろうが、文面から読み取れる興奮度合に彼は苦笑いを浮かべる。

 広告紙面の半分には本社まで来てもらいたいという旨と、もう半分には「エキセントリックが着ていたスーツを着よう!」という文字がページを斜めに走るように踊っていた。全く商魂逞しいことである。

 ユリウスが関連記事に飛ぶことを繰り返していれば、新着ニュースに複数のスーツメーカーがエキセントリックをイメージキャラクターに雇いたいと表明したと出た。偶然とはいえ初登場時にラルフローレンを着た相手に対してよく言えたものだが、それだけせっぱ詰まっているということだろうか。ユリウスとラルフローレンの間には「デパートで店員に見繕ってもらったのがラルフローレンだった」というだけの繋がりしかないが、どうせなら雇われてみようか――などという考えが浮かぶ。ヒーローを戦う広告塔にしたいなど、なかなか革命的な考えであろう。


「『もし承諾してくれるなら、今夜シュテルンビルト支社ビルの空中庭園に飛んで来てくれることを願う』か」


 それなら先ず偽物が来ることはない。風を操る能力者だと思われているエキセントリックだが、彼の能力は念動力である。風の能力者とは能力のアプローチが異なるのだ。また、他に風を操るNEXTがいたとしても、エキセントリックに変装して登場したところで損はあれども得はない。

 インターネットで「ラルフローレン支社ビル 空中庭園」と検索すると、かの空中庭園なるものは四十階建てのビルの三十五階にあるという。ビル本体から十メートルほど外に突き出した円盤状なのが特徴で、ビルにUFOを差し込んだような見た目だった。人はバビロンの時代からお空に近いところにお庭を作るのが大好きなようである。

 画像クリックを繰り返し庭園の画像を見ればなかなか綺麗な庭だ。しかしフランス出身の支社長が三年前に日本庭園にした一角は植物園風の周囲から浮いており、そこだけあまり人気がないらしい。当然といえよう。


「にしても、今夜って何時のこっちゃろ……」


 ユリウスの声は空虚に響いた。




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