乙男…?(傍観ネタ)
馬鹿な黒い犬畜生が可哀想で、キッチンに頼んでチキンとか色々混ぜた猫まんまならぬ犬まんまを作ってやれば、何故か泣きながら食べていた。泣く理由が分らん――あれか、嬉しさのあまりか?
「犬、おまえ臭いな」
ガツガツと犬まんまを食べるシリウス・ブラックにそう言えば、ビクッと肩を震わせ挙動不審になる。おい、そんなバレバレな行動とって良いのか。一年の最初の変身術の授業でアニメーガスについてちらりと学ぶから分る人間には変身している意味がないだろう。
「今度犬用のシャンプーを持ってこようか……。お前は臭すぎる……元々飼い犬だったのか? 自分で身ぎれいにする方法が分らないのかもな」
そう言って軍手をはめた手で撫でれば抜け毛がびっしりついてきた。素手で触らなくて本当に良かった。
「その前にブラッシングか」
そう呟けばシリウス・ブラックは舌を出して喜んだ。元々が人間だと思うと気色悪いな。
「オレは授業があるから昼にしか来れない、朝と晩は自分で何とかしろ」
もう一度撫でて立ち上がり、振り返らずに離れた。原作のシリウスの哀れさに手を出してしまったが、あれは本当に哀れで涙を誘う。十年以上風呂に入ってないから臭いし、十分な食事を取っていないからガリガリだし……貴族のお上品さはどこに置いてきたんだかと思うほど食い方が汚い。――いや、犬のナリで餌を食べるのに慣れてないからか?
次の日も哀れな男のために肉類と少しの野菜を持って庭へ向かえば、後ろからジニーが追ってきた。顔を上気させているから、だいぶ走ったんだろう。
「どうした、ジニー。オレに用事か?」
「えっと、これといった用事はないわ」
ジニーは息を整えながら首を振った。ならどうしたというんだろうか。
「でも、シェーマスが大広間を出るのが見えて、どうしたのかなと思ったの」
「そうか。――ならジニーも来るか? 野良犬が迷い込んだみたいでな、腹をすかせてるんだ」
「あら、可哀想ね……庭のどこら辺にいるの?」
「昨日はあの大きな木のあたりで見たな。今日はどうかは知らん」
「ふーん。私、まだお昼を食べてないの。食べたらまた来るわね」
「そうか。ならまた後でな」
ジニーといったん別れ、バスケットの蓋を開いてシリウス・ブラックを呼ぶ。匂いに釣られて黒い犬がのそのそと現れた。昨日も思ったが貧相な犬だ。人間に戻ったら骨と皮なんだろう。
「ほら食え。食った後でシャンプーするからな」
チキンに一番にかぶりつくシリウス・ブラックを見て、この男はどんな状況でもチキンを優先しそうだと考える。ハリーよりもチキンの方が好きなんじゃないか?
後から合流したジニーと一緒にブラッシングをすれば大量の毛が抜け、元々貧相だった見た目が更に寂しくなった。スコージファイで汚れを清めれば匂いも落ちた。少なくなった毛がふんわりして大犬らしくなり、これならハリーが見ても恐慌状態になれると内心太鼓判を押した。
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久しぶりのシェーマス更新、物凄く淡白な人間だなぁと再認識 07/26.2010
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