ゆめまぼろし
夢の世界ってご都合主義だね、本当。
「クフフフ……」
私のいた研究所が襲撃された。今回の襲撃者はなんとボンゴレ!――この夢の中で何回かオリジナルやツナに会ったけど、それ関係してるのかな。
私はその迎撃のため駆り出され、私の武器である大鎌を構える。右手には二メートルほどの大鎌、左手にはチョコレート。チョコくれなきゃ出ないって言ったら板チョコ一枚まるまるくれた。追い返せたらもう二枚くれるらしい。頑張らねば!
パキンとチョコを噛み砕く。カカオだ、カカオが補給される。カカオ成分の欠乏してる四肢に、糖分とカカオが浸み渡っていく。
バタバタと近づいてくる足音が遂に角を曲がって私と対面した。人数は三人――茶髪の青年と、銀髪のタバコ咥えてるのと、ナッポー頭の私の『オリジナル』。つまり、ボンゴレ十代目沢田綱吉と、その右腕獄寺隼人と、霧の守護者六道骸。他にも部下を何名か連れてきてるみたいだけど、超直感のある綱吉――ツナのいる班が一番の近道を来たんだろう、私の『視る』限りここまで中央部に近いのはこの三人だけだ。
「……っ!!」
「この子だっ!」
「この餓鬼が……?!」
オリジナルは何かを堪える様な顔をし、唇を固く引き結ぶ。オリジナルも昔実験動物だったからかね? でも私、痛い思いなんて一度もしたことないよ。体力テストしたり、活火山の火口に見学に行ったりしてるだけだもん。
ツナは私を見て一瞬顔を綻ばせるがすぐに表情を引き締めた。ごっくんは――初対面で『この餓鬼』扱いって酷いと思うよ。そりゃあごっくんはオリジナルが嫌いなんだろうけど、それをクローン体である私にまで適用しないで欲しいね。
「んちゃっ」
私はチョコを口で割り、再び食べる。こういう機会でもないとチョコをもらえないんだから仕方ないよね、今食べないと次いつ貰えるか分からないんだから。今回に限っては後でまた二枚くれるって言ってたけど、食べられる時に食べとかないと絶対に損をする。経験上。
「チョコ好きって……骸そのまんま……」
「僕はちゃんと場所をわきまえて食べます!」
「十代目の言葉を否定すんのかコンニャロー」
この三人、敵を目の前にしてる自覚あるんだろうか? せっかくだから油断してる今を狙わせてもらおう。
「地獄道――」
技名を言わなきゃ技が発動しないわけじゃないけど、どうせ夢だし。恥ずかしさなんてさっぱりないよ。
幻はマグマのふつふつと揺れる火口。急に変った足元にツナが青ざめ、オリジナルは幻術返しをする――濁流が火口に押し寄せ、瞬間的に気化した水が霧を立ち上らせる。でも、コーディネーターをなめないでもらいたい。それにここは私の夢なんだから、全ては私のしたいようになる――はず。
オリジナルが霧を風で晴らすと、急激に冷却され黒く固まった溶岩が足元に広がる。――どうやらまだ経験不足みたいだ。固定観念が強すぎるのかなー、これ、私の夢じゃなかったの?
「まさか――保護対象が敵対行動をとるとはっ!」
「ええええ何で――?!」
「アチッ! この餓鬼ィッ!!」
「クフフフ」
焦る三人につい笑いがこぼれる。ツナがオリジナルを見やって親子だと小さくつぶやくのを聞いた。違うよ、クローンだよー。そりゃあ多少私には遺伝子改変が加えられてるけどさ。
てかさ、私もやる気ないけど向こうもやる気ないね。こらダメツナ、殺しあってる最中によそ見すんな。
「なんという名前なのかは知りませんが、貴方は――」
「sessantanove」
「――は?」
「sessantanove」
イタリア語習得用に見てたアニメで数を数えるのがあって、それで六十九番目にケバい顔のキャラがsessantanoveって言ってたから、きっと私は番号で呼ばれてるんだろう。ついでに上のイタリア語が読めないお嬢さん、イタリア語はローマ字読みすればだいたい合ってます。
「――ッ! ボンゴレ、あの子は必ず保護します、良いですね?!」
「そのために来たんだろ! 決まってるよ。こんな場所には置いておけないよ!」
何でだろう、向こうさんが急にやる気になった。
「No――Ciao」
一応「いらん、サイナラ」と言ったつもりだけど、私はイタリア語は勉強途中だから自信ない。
結局、私はボンゴレに保護された。だってツナが、大人しく保護されたらチョコあげるよって言ったから。
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元の文章からあまり変わってないけど、一応変えた。 06/23.2010、06/24.2010改稿
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