揺り籠から墓場まで3
私のお姉ちゃんは誰よりも優しくて、強くて、私の自慢。だけど『私の』お姉ちゃんは今、ピンク色の頭の赤ん坊に取られちゃった。あの子は邪魔、お姉ちゃんを取って、邪魔。
「私、マチなんてきらい」
捨て子だったマチを拾ったのは私。でも、拾わなきゃ良かったって思ってる。だってお姉ちゃんが取られたんだもん。
「マチを拾ったのはパクだろ」
「――うん」
でも、嫌い。嫌い。嫌い。お姉ちゃんは私だけのお姉ちゃんなのに。
「××姉はパクのことぞんざいに扱ってるのか?」
「ううん……」
分ってる。お姉ちゃんは前と同じように私に笑いかけてくれるし、頭を撫でてくれるし、ご飯を作ってくれる。でもお姉ちゃんの中の優先順位が変わった――私の次にあの子がいてることがいやだ。お姉ちゃんは私だけ大事にしてくれなきゃいけないのに、私にだけ笑ってくれれば良いのに、あの子は当然みたいに与えられてる。
「毎日おまじないだってしてくれるし、だきしめてくれるし、いっしょにねてくれるけど、あの子が泣いたらお姉ちゃんはマチのほうにいくのよ!」
だから嫌い。嫌い。嫌い。
「パク、おまじないの意味覚えてるか?」
「おぼえてるわ。『パクがびょうきになりませんように』って」
健やかに育ちますように、幸せに過ごせますように、と。――ああ。
「それが××姉の想いだと、オレは思う」
そうだ。――嫉妬して、どろどろとした思いでいっぱいになってたから、分らなくなってた。
お姉ちゃんはいつも私の幸福を願ってくれてるんだって。お姉ちゃんがマチの世話をするのは『私が連れ帰ったから』だって、分ってたけど気付かなかった。
「ありがと、クロロ」
「どういたしまして」
今日は早く家に帰ろう。きっとお姉ちゃんが、美味しい夕ご飯を作ってまってくれてるだろうから。
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ちと短い。 06/20.2010
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