待合室での出来事



 空調の効いた、居心地の良い部屋。開放感があり、ソファーの上にはクッションが並んでいる。私はそこで漫画を読み過している。ほぼ一日中。

 学校は休んでいる。だって、人間関係を築くのが面倒なんだ。我ながら厨二病だろこれとか思ってるけどホントに面倒なんだもん、仕方ないよね。


「ヒバツナだよ、うん。未来編の修行パートはガチでヒバツナ。押し倒せば良いのに」


 同人誌じゃ押し倒しまくってるけど。原作は一応少年向け漫画だからなぁ、今から腐向け雑誌に移れば良いのに。未来編終わったけど今からでも遅くない、移れば良いのに。

 押し倒されるツナを想像して萌えた。雲雀さんから『つなよし……』とか呼ばれて潤んだ目を向ければ素敵。そのまま美味しく頂かれるんですね分ります。

 とか、こんな妄想してる私だけど流石の私もここで同人誌を読むほど開放的じゃない。だってここ、私の部屋じゃないし。


 父さんの仕事場こと、歯医者の待合室だもんね。


 漫画を手下げにしまって、代わりにクッションを抱きしめた。ビーズクッションだから柔らかい。この柔らかさはきっとおぱーいを参考にしたんですね分ります。

 クッションに顔を埋めてしばらく過していると、自動ドアが開いて新しい患者さんが入ってきた。いつもは繁盛してるけど、平日の昼間だってことと、この叩きつけるような雨でキャンセルが乱発したから空いてる。

 この雨の中珍しいと思って見れば、サラリとした髪は烏の濡れ羽色、切れ長の眦は釣り上がり、不機嫌そうに歪めた口元も麗しい少年だった。肩が濡れてる。傘を差さなかったんだろうか?

 私は立ちあがって診察室に入ると、折りたたまれたタオルを手に引き返した。雲雀さんにクリソツな美少年に風邪をひかせるわけにはいかない。美少年は世界の宝だから。


「はい、これ使って」


 受付のお姉さんに保険証と診察券を渡し待合室を見回した彼に声をかける。


「なに?」

「貴方濡れてるから、そのままにしてたら風邪引いちゃうよ」


 彼は上着――というか学ラン――を脱いで腕に持ち、私からタオルを受け取った。


「ありがと」

「どういたしまして」


 無言のまま時間が過ぎた。


「――ねえ」

「え?」


 まさか美少年から声をかけられるとは! 天変地異の前触れか?!


「君、どこが悪いの」

「ふぇ?」


 何かおかしな行動をとっただろうか、私。


「だから、虫歯なの?」


 どうやら患者だと思ったらしい、違うよ、歯医者の娘だよ。


「私は虫歯とかじゃなくて、父親がここの先生やってるから」

「ふーん」


 手を振って否定し、彼はどうなんだろうと思った。


「君は?」

「僕? 僕は親知らずを抜いてもらうつもり」


 親知らずは十六・七までに抜かないと、もしちゃんと生えなかった場合、隣の歯を圧迫する可能性がある――というか確実に圧迫する。だから中学生あたりで抜いてしまうのが良い。見たところ同年代の少年だし、まだ十六にはなってないっぽいからちょうど良いんじゃないかな。


「親知らずか……知ってた? 親知らずは早めに抜かないと前の臼歯の根っこを圧迫して歯並びを悪くするんだよ」

「へえ」


 そんな話をして時間を過ごしていると、診察室の扉が開いて看護師のお姉さんが顔を出した。


「雲雀様、雲雀恭弥さん。診察室へどうぞ」


 ――うん?


「行ってくるよ」

「あ、行ってらっしゃい」


 手を振って彼を見送り、それから首を傾げる。

 聞き覚えがある気がするけど、知り合いだったっけ?

 手を振った勢いで、私にもたれかかってた手下げが倒れた。出てくるREBORN! の文字。


「雲雀、恭弥」


 なんかおかしい。なんかおかしくないか? ものっそい予想が頭の中を駆け巡ってるんだけど。


「雲雀、ヒバリ……」


 まっさかぁ。ハハハ――――











 なんたること!






+++++++++

 ネタを頂いて、目が冴えていたのでガリガリ。良いなぁコレ。
06/20.2010

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