傍観ネタ(シェーマス2)



 ジニーが慕ってくれるのが可愛くて、勉強の質問があれば懇切丁寧に分るまで教えるくらい、オレはジニーを気に言ってる。その日も、オレはジニーの質問にオレなりの解説を加えて説明をしていた。真面目に学ぼうとするその姿勢を好ましく思ったって理由もあるんだぜ? ギャーギャー騒ぐばかりのクソ餓鬼とは雲泥の差だからな。


「分るか? ここはこれの乳化作用で分離を防げるから――」


 羊皮紙に図を描き、目で見て分るようにすれば納得の声が上がった。スネイプ教授は難解な言い回しを好むから、分りにくいっちゃ分りにくい。でもまあ慣れりゃ別に気にならないしな。まだジニーも十二歳だし、持って回ったような表現に首を傾げることも多いんだろう、噛み砕いて言い換えてやればすぐに理解を示した。


「シェーマスの説明って本当に分りやすいわ。先生よりも教師に向いてるんじゃない?」

「んー、オレは教師には向いてないさ。スネイプ教授はちょっと性格がキツいけど教師としては最高の人だぜ、ジニー」


 教師ってのは体力と、忍耐力と、知識、この三つが必要最低限の要素だ。ついでに知識は別に後付けで構わないんだから置いておくとして、まず必要なのは体力。餓鬼共の監督をするのも研究をするのも、体力がなきゃ話にならない。次に、失敗ばかりする人の説明を聞いてない糞餓鬼を怒鳴り散らしたいのを我慢したり、人の鍋に爆竹投げ込んだばかりじゃなく薬品倉庫に忍び込んで貴重な材料を盗んでったボケ餓鬼を殴り付けるのを我慢したりするのに忍耐力が必要だ。


「そうなの?」

「ああ。スネイプ教授は魔法薬学の教師として最高峰だとオレは思うな」

「じゃあ私たちってその最高峰の教授に教わっているってことなのね」

「そうだぜ。スネイプ教授は世界でも数少ない、プロフェッショナル中のプロフェッショナル。一言も聞き漏らせないくらい凄い人なんだ」


 脱狼薬を作れるのは世界中でもたった数人。その一人が我らがスネイプ教授なんだから凄いことだよな。ホグワーツが進学校だってことが良く分る。



 禁書の棚にある本を取りに図書室へ行き、でグリフィンドール生にしては見どころのある生徒シェーマス・フィネガンが、同じく中でもまだ見どころのある生徒ジニー・ウィーズリーに勉強を教えている姿を見た。なるほど、類は友を呼ぶと言うがその通りだ。あのロナルド・ウィーズリーを兄に持つジニー・ウィーズリーだが、兄と比べて才能がありその成長は目覚ましい。だからだろう、あの他人嫌いのフィネガンが彼女に構っているのは。

 フィネガンは同年代の中でも抜きんでて成熟した精神を持ち、知識才能努力、この三つを兼ね備えている。授業中に馬鹿騒ぎをするような餓鬼共とは一線を画し、私はもちろんのこと教師陣からの受けも良い。グリフィンドール生には気に入らん間抜け共しかいないと思っていたが、あの少年は話が別だ。この私が、フィネガンになら点数をやっても良いと思うのだから。

 今は魔法薬学をしているらしい、昨日ジニー・ウィーズリーのクラスで教えた内容を簡単な表現にして説明しているフィネガンに自然目元が緩む。説明できるということは深く理解しているということだ。昨年の内容とはいえ三年の中でこれほどきちんと説明できる者は他にいないだろう。


「シェーマスの説明って本当に分りやすいわ。先生よりも教師に向いてるんじゃない?」


 ジニー・ウィーズリーもフィネガンが教師に向いていると思ったのだろう、そんなことを口にした。私も彼になら薬学を任せても構わないと思える。校長は渋っているが私が闇の魔術に対する防衛術を担当すれば問題ない。


「んー、オレは教師には向いてないさ。スネイプ教授はちょっと性格がキツいけど教師としては最高の人だぜ、ジニー」


 だがフィネガンは魔法薬学教師としての私が素晴らしいと、言った。


「そうなの?」

「ああ。スネイプ教授は魔法薬学の教師として最高峰だとオレは思うな」

「じゃあ私たちってその最高峰の教授に教わっているってことなのね」

「そうだぜ。スネイプ教授は世界でも数少ない、プロフェッショナル中のプロフェッショナル。一言も聞き漏らせないくらい凄い人なんだ」


 ジニー・ウィーズリーが首を傾げて訊き返すとさらに言葉を重ねて微笑んだ。顔に血が集まる――今の私は間違いなくみっともない顔をしているに違いない。同じスリザリン寮の者だからという理由でしか私を称賛できない者や、あのスリザリン寮の者だからという理由で私を毛嫌いする者たちとは違うのだ、フィネガンは。私が『私』という者だから好きだと、尊敬すると言ったのだ。他人に決められた寮ではなく、私の人生を、努力の結果を尊敬する、と。掌で顔を覆う。口元が弧に歪むのを直せない。

 フィネガン、それならばこそ、私はお前に知識を与えよう。お前の言う『プロフェッショナル中のプロフェッショナル』を超えて見せろ。そのために私も全力でお前を育てよう。
04/11.2010

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