♀+♂→QUEEN3



 小学時代の友人がヤンデレで夜もぐっすり眠れない。――研究所で悲劇的な再会をした後、承太郎は何故かSPW財団内で絶大な権力を握っているらしくアメリカに連行された。お前まだ若手だろ、一山幾らの研究職員じゃなかったのか。

 アメリカ生活は娘だというジョリーンちゃんが超可愛いくて天使なこと以外はストレスフルな日々……承太郎の嫁さんのうさみちゃんみたいな視線が痛いし、承太郎の視界から外れた場所に行くとすぐに連れ戻されるし、自由何それ美味しいの状態だった。当然ながらストレスはマッハで増加して体力も落ちた。逆に考えるんだ、ジョリーンちゃんとイチャイチャできて嬉しいじゃないかって。ジョリーンちゃん、オレの癒しよ……オレに力を!!

 日本に行くからついて来いと言われて言ったのは東北にある杜王町って町で、夜の間に大学の友人のところへ逃げたらその日の昼には玄関の前に鬼神がいた。一体どうやってここを見つけたんだ。――もはや残る道は大陸か。中国大陸に逃げる他ないのか。雑踏にまぎれてサヨウナラでもしないと無理なのか。

 杜王町では知りたくもないのにスタンドがどうのこうのという問題に巻き込まれ、突然壁が壊れたり治ったりというのを間近で見て理解する努力を止めた。時を止める能力ってどういうこと。触れた物を直すとか爆発物に変えるとか常識を無視し過ぎだろ。

 そんな非現実的なことに巻き込まれながらも、幸運なことにオレは五体満足で命長らえた。仗助君が直してくれたからなんだけどね……死にかけたオレを見た承太郎の拘束が更に強くなったんだぜ残念無念また来週。そしてオレは承太郎のストーキング行為について深く考えるのを止めた。

 そんなこんなで過ごしているうちに、承太郎のヤツ奥さんと離婚することになりおった。何故かその離婚の席に呼び出されたオレは泣きそうだ。なんでだ。なんで知り合いの離婚に同席しないとならないんだ。

 承太郎のお宅で三人。承太郎と奥さんが向かい合って座り、オレはその間に腰を下ろした。片付いた部屋というか片付き過ぎた部屋というか、生活臭がしない。食器の数は少ないし写真も飾ってないし、まるで引っ越す間際だ。ま、離婚しようってんだからどっちかが引っ越すことになるんだよな!!――空気が湿っぽいから脳内だけは明るくいようと思ったけど、めっちゃくちゃ空回りしてるわー……。

 頭の中が混乱の極みにあるオレをよそに、奥さんがぽつり、と口を開いた。


「ナルミさん……本当はずっと前から知ってたんです、私。貴方とジョジョが交際してるって」

「……はい?」

「ずっとそばにいて、信頼し合っていて……羨ましかった。妬ましかった」

「ちょっと待てそれマジで勘違いオイてめえ承太郎何か言え貴様の奥様勘違いなさってるからこれを機に普段の行動を見つめ直そうか」

「オレとこいつは付き合っていない」

「嘘よ!!」


 承太郎が奥さんを真っ直ぐ見つめながら首を横に振るが、奥さんは鋭い声で否定した。本当だよ、嘘じゃないよ!?

 仕方がないのでオレが元々男だったこととかを話した。今女なのはまあ色々あったんです、と。結婚とか男とお付き合いとかマジで考えられんとか。

 ――性別に悩んでいる時に承太郎に迷惑をかけたうえ、何も言わず転校するという裏切り行為を働いたこと。職場で再会してからも顔を合わせづらくて逃げまくってたら承太郎の執念深くて粘着質な――おおっとうっかり間違えた、こいつはうっかりだぜぇ!!――心配性な心をいたく刺激してしまったこと。目を離すと糸の切れた凧のように飛んで行くのではないかという心配から右手と左手を手錠で繋がれたこと。友人と呑みに行くと置き手紙しておいたのにいつの間にか隣にいて一緒に酒を呑んでいたこと。


「だからオレたちは付き合ってるんじゃなくて、どちらかと言うと保護者と子供なんだ」


 何故か奥さんの顔が引きつってるけど気のせいか?


「そうだったの……でも、私はもう耐えられない。耐えられないのよ。家を振り向いてくれないジョジョに、疲れちゃったの」

「奥さん……」


 奥さんとジョリーンちゃんをスタンドの問題に巻き込まないために、承太郎がわざと家を開けていたことは知ってる――オレは何故か積極的に巻き込まれたけど。実を言うとオレも巻き込まないで欲しかった。


「詳しいことは言えませんが、承太郎は、ジョジョはいつも戦っています。貴方達を守るために戦ってるんです」

「ナルミ……」

「でも、そんなの言ってくれなきゃ分りませんよね。承太郎は口はもちろん顔にも出さないタイプだから――分れって言う方が無理なんですよ」


 だから、辛いと思うのは当然なんだ。そう口にすれば、奥さんがワァッと泣きだしてオレの胸に飛び込んだ。間に挟まったテーブルの角と承太郎の視線が痛い。あれ、ジョリーンちゃんがドアの隙間からこっち覗いてない? ねえ覗いてない?


「離婚して欲しい、じゃなくて、離婚してやるって言ってしまえば良いと思いますよ」


 奥さんはオレの胸でさんざん泣いた後、恋する乙女の表情で一緒にオランダへ行ってジョリーンと三人で暮らしましょうよと言ってきた。あそこ、同性婚法あったよな、確か……。







♀+♂+♀+♂+♀
 24から転載&加筆修正有り。
2013/07/15

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