赤ちゃんとボク25



 イルミとキルアの試合が混乱の内に終わり、最終試験の不合格者一人がキルアに決まった。次の日の昼前、部屋で待ってると主張するリンネをおんぶ紐で背中に固定して合格者講習の会場へ入る。本人はベッドで寝ているつもりだったらしいけど、ボクの背中で寝ていても良いじゃないか。リンネ、パパが嫌いなのかい?


「講習会ってことは司会者がマイクを持って何か話すんだろ? そんな煩い中じゃちゃんと眠れないぞ」

「なるほどね☆ でももう会場に着いちゃったから諦めて☆」


 短い手足でボクの肩や背中を殴ったり蹴ったりするリンネに胸がほっこりとしながら会場に入り、リンネが視姦されないように後ろの席に座った。――前の方に座ってたイルミがわざわざボクの隣に座ったと思えば、おんぶ紐を切ってリンネを奪おうとしたのを直前で止める。


「何をするんだい☆」

「契約は試験後から一ヶ月だろ? ならオレが持ってても良いはずだよね」

「まだ講習が終わってないよ☆」

「たった数十分じゃないか」

「同じ言葉を君に返そう☆」


 眠気で涎垂らして視線を宙に飛ばしてるリンネを奪い合えば、リンネが噴火した。


「オレは物じゃないぞ!」

「だってイルミが」

「だってヒソカが」

「良い大人が『だって』とか言うな! それに、だっても勝手も明後日もない!! オレは部屋に帰る!!」


 机の上に仁王立ちしてぷんすかと鼻を鳴らすリンネは可愛い。そう思って頬を緩めてたら、反省してないと怒ったリンネが幻術で背中にジェットエンジンを作りだすとそのまま点火して飛んで行く……赤ん坊がジェットエンジンを背負って飛ぶ姿ってシュールだね。

 他の合格者たちも唖然とした様子でリンネを見送り、会長も遠ざかって行く背中を呆然と見送った。


「流石リンネ」

「ボクたちの想像を超えたことをしてみせる☆」


 これだからリンネの観察は止められないよ。あんなことも出来るとはね。会長あたりは具現化系の念能力者と勘違いしたのかもしれないけど、あれは幻術。リンネはボクと似てるから変化系か操作系、その存在自体が特殊ってことで特質系の可能性もある。


「あー……講習会を始めても良いかね?」


 全員の視線が扉の向こうへ向いているのを手を叩くことで前に戻し、会長が豆みたいな男を壇上に手招きした。豆男もハッと扉の向こうから視線を戻して手の中の書類を抱え直すと、もたもたとマイクの前へ走って行った。


「では、合格者講習を始めます!」


 豆男の視線はボクたちではなく、リンネが消えた扉の向こうに向いたままだった。






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 久しぶり過ぎて全然筆が進まないという恐怖を味わったぜ……これぞまさにポルナレフ状態。
2013/07/13

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