Unchained melody2



 お粥兄貴の率いるチームのアジトで暮らすようになって、もうはやいもので一週間が過ぎた。チームの方々のお陰で歩くわいせつ物陳列罪――変態の魔の手から逃れ、平穏な生活を送ることが出来ています本当に有難う。

 私の面倒を見てくれるのはお粥兄貴、生ハム兄貴、魚類兄貴、チーズ兄貴の四人が中心で、幻影兄貴と氷兄貴はメロンを抑える役に回ることが多い。幻影兄貴は私と二人きりになった時に「ああ、癒しだ……」と私をクッションのように抱き締めたから、メロンのせいでストレスが溜まってるに違いない。可哀想だけど私の平穏のために犠牲になって下さい。

 氷兄貴はメロンの足元を氷漬けにするだけの簡単なお仕事なのでさほどストレスはないみたいだ。時々飴をくれる程度の接触だけど、悪くない関係を築けてると思う。

 シエスタということでたっぷり寝た後、おやつだと言ってババを出されたのだけど子供のおやつには味が複雑すぎやしないだろうか。スポンジからじゅわりと染み出るシロップの甘さにうまうま言いつつババを食べる私の頭を撫でながら、お粥兄貴が言いました。


「良いかアングリア、お前は変態になるなよ」

「はーい」


 なるつもりはないので安心してください。お粥兄貴は私がチーム員の子供だからか、私に対する責任や義務も負わなければならないと思ってるみたい。私が危険なものに近づいたりするとすぐに気付いて注意するし、手を洗えとかうがいはしたかとか聞いてくる。ムキムキマッチョなのにママンや……。

 そういえばつい一昨日にも、生ハム兄貴に言われました。


「良いか、アングリア。お前は誰だと聞かれたら名前を言うんだ。決してメローネのように『君のその屠殺される鶏を見るような目に興奮する』とか『もっと君の冷たい目を向けてくれ』とか言うんじゃないぞ」

「はーい」


 おいメローネ、仲間からこんなこと言われてあんたは平気なんですか。というか、実際にそういったことを言ったんですか。魚類兄貴も涙目で「そんなメローネみたいな大人になったら嫌だよ!」と言ってた。メロンは彼らに一体なんだと思われてるんだ――変態か。

 これは昨日の事だけど、チーズ兄貴も言いました。


「良いかアングリア。てめーは疑問文にはSiかNonで答えろよ」

「はーい」


 つまりメロンは疑問文に疑問文を返したんですか。

 その時一緒にいた幻影兄貴も言いました。


「アングリア、メローネに何かされそうになったら俺のところに来いよ。鏡の中に逃がしてやる」

「はーい」


 何かされることが前提のように聞こえますが、勘違いでしょうか。ねえ兄貴、目を逸らさないで下さい。

 氷兄貴は何も言わず、ただ私の頭を撫でてくれた。その後で本を床に叩きつけて「役不足と力不足を間違えるんじゃねぇよぉぉぉ!!」と本をぐしゃぐしゃに踏み潰してたけど、まあ良い兄貴だ。

 ドタドタと居間に足音が近づく。お粥兄貴がため息を吐いたから帰ってきたのはメロンに違いない。勢い良く扉が開いて現れたのはその通りメロンで、壁で跳ねかえった扉が肩に当たってた。


「ただいまー! アングリア、アングリア!! パパンにお帰りのちゅーは!? ほらここにっ! ちゅー!」

「煩いぞメローネ。さっさと手を洗いに行け」


 わざわざ片膝を突いて頬を指差すメロンにお粥兄貴がビシッと言ってくれたので、メロンは「顔も洗ってくる!」と言って洗面台に走って行った。


「今のうちに食べてしまえ。メローネにあーんされたくないんだろう?」

「うん」


 まだ半分以上残ってたババを口の中に詰め込みお粥兄貴の淹れてくれたカフェオレで流し込んだすぐ後、メロンが帰って来た。


「アングリア、ほらほらココ! ココにちゅーするんだよ!」

「うぇーい」


 お粥兄貴が椅子から下ろしてくれたので、仕方なくメロンに近づいてその頬にキスした。その途端私を抱き上げて満面の笑みを浮かべながらくるくる回るメロン。


「ふふふ! 良いかいアングリア、君もパパみたいにディ・モールト・ベネな大人になるんだよ!」

「え、ヤだ」


 メロンが「なんで!? えっ、だって……え!?」と混乱してるみたいですが、私は変態になりたくないのですよ。









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 これは五部沿いです(震え声)
2013/07/07七夕さらさらちゃうかった。笹の葉さらさらだった。

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