Unchained melody



 ゴーストタイプのポケモンたちに囲まれてウヘウヘいう生活を送ってたのが悪かったのか、ママに「ヒッキー卒業しろ!」って怒られて外に出たのは良いんだけどすぐに行き倒れた。誰も通らないような山道……「このまま私は死ぬのか……」そう思ったところから物語は始まるのだと、誰か心優しい通りがかりの人が私を助けてくれるのだと、信じてた。本当にそのまま死ぬとは思いもしなかったよパトラッシュ。

 自己紹介が遅れました。DSでダイヤモンドをしながら道を歩いてたら知らぬ間に信号無視しててトラックに轢かれ、ポケモンワールドに転生したは良いけどゴーストタイプのポケモンと闇の中でグフグフ言ってたら親に家を追い出されて志半ばで倒れた人です。そして今度は三回目――今度こそちゃんとした人生を歩もうと、思っていました。


「アングリア! 君はアングリアというのか、ああなんて可愛いんだッ!! 俺の天使!!」


 母さんに「父親にだけは絶対に似るな」と言われながら育つこと三年。あの母さんをして「あれは間違いだった」と頭を抱えさせるような父親はどんな人間なのか、気にならないわけじゃなかったけど口に出来る環境じゃなかった。

 でも母さん、貴方は正しかった。まだ三歳の私の両脇を持って上下に振る男は私の父親でメローネというらしい。――この男、変態だ。

 私は母さんに色も顔も似てないなとは思っていたけれど、ここまで父親にそっくりだとは思いもしなかった。アシンメトリーの金髪で緑の瞳、造作は整ってるはずなのに服装とか言動で残念さが漂う。私は潔い程にびしっと真っ直ぐな金色のストレートで、ラクダ並みにばっさばっさの睫毛に縁取られた切れ長の緑の目をしてる。前世は茶髪茶目で前々世は黒髪茶目だったから、鏡を見る度に違和感マックスだ。可愛いけど、これは私じゃなくて私の入った器の容姿――みたいな?

 母さんと私がメローネに見つかったのは本当に偶然のことで、私の外出着を買うために街の中心部へ出たところをメローネに運悪く見つかってしまったのだ。母さんは私を見捨てて逃亡、子供が大人から逃げ切れるわけがなく私のみ捕獲された。

 母さん、母さんはどうしてこの人と子作りをしたんですか。乳首が丸見えのセクシーというより露出狂な……大胆にカットされた元々はライダースーツだったのだろう皮製の上下を着て、何故か片目を覆うピンク色の仮面。こんなのとどうして恋に落ちる要素があったんですか。恋は盲目なんですか。

 名前は何だと粘着質に訊ねられたので仕方なく名乗ったら、メローネは私を抱き上げてクルクル回ったり私に頬ずりしたりというごく一般的な愛情表現をした後、彼の住処だというアジトへ私を連れて帰った。あれ、これって誘拐……。


「たっだいまー! 見てよ、俺の娘! 可愛いだろー」

「へーそりゃー良かったなー……娘!?」


 髪がクルクルした眼鏡男子が雑誌から顔も上げずに生返事をした後、目を剥いてこっちを見た。その叫び声に釣られてお玉を持った金髪の美男子が台所から現れるや「なッ!? おいペッシィィィィ!! こっちへこぉぉぉぉぉい!!」って怒鳴って、はたきと塵取りを持った掃除スタイルの白目のない怖い顔が「ブバッ!!」って無表情のまま噴いて、刈り上げの人とネイティブアメリカンみたいなファッションの人がお互いの頬をつねったり殴り合ったりして正気を確かめた。


「もう天使だろ? ていうか天使以外の何だっていうんだよ。俺そっくりなのがホントすげー」

「似てるからって子供を誘拐してくるんじゃない。元いたところに返してきなさい」


 オカンファッションの白目がない人が両手を胸の位置に上げて「落ち付け」のポーズをしながらゆっくりと言い聞かせるように言った。


「そうだぜメローネ、てめーが子供欲しいってことは知ってるけどよ……そこら辺のガキ誘拐したら駄目だろ」


 くるくる頭の人が常識的なことを言った。正論だ。私を母さんの元に返して欲しい。無理だけど。


「ペッシ、あんな大人になるなよ」

「うん兄貴ッ!」

「メローネの奴、幼女趣味があったのか……」

「今さら幼女趣味だって分ったところで変態が変態だってことに変わりはねーけどな」


 おい、ボロクソに言われてますけど。


「もーやだなー、この子は正真正銘俺の子供! 血の繋がった我が子なんだよ! この子の母親とセックスしたことあるし!」

「子供の前でそういう言葉を使うんじゃない。ちび、こっち来い」


 お玉を持った金髪さんに呼ばれ、メローネのムキムキな腕を蹴って床に降り走った。メローネが「ああ……!」とか言ってるけど無視だ。


「お前のママンのところに返してやるよ。住所は言えるか?」


 親切なお兄さんだ! だけど、アレを言うべきか否か。――言わなくては始まらないだろう。仕方ない。


「言えるよ。でも、帰ってもママンはいないよ」

「買い物ってことか? それなら帰ってくるまで一緒に待ってやるから心配するな」


 顎の無いパイナップルみたいな人も私を見てにっこり笑った。


「違うの。ママン、メローネに見つかったらあのお家から逃げるって言ってた。ママン、私を置いてったよ」


 私がまだ乳児の頃から、母さんは言っていた。「何かあったらお前を置いてでも私は逃げるから、その時はメローネに金をもらうでも何でもして生きて行きなさい」と。まさか三歳でその別れが来るとは思わなかったです。

 ――こうして、私と兄貴たち時々メローネの生活は始まったのです。






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 どしSiを書いてるとどんどん気力が削られていくので、箸休めとして書いてみた。ネタ作!のお兄ちゃんが暗殺チーム…だとから、イルーゾォが兄妹設定でメローネが親子設定ということにしたら良いのではないかと思いつつ。メローネはコミュ力のない変態だ。
2013/07/07たなばたさーらさらー

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