Applauso2



 はいはいこちらエマヌエーラ・シャーシャ・ジョルダーノです。名前が長いのは両親が「マフィアに決して媚びぬへつらわぬ人になってね!」という微妙にネタ臭い理由で、初めて反マフィアの小説を書いたことで有名な作家のレオナルド・シャーシャから名前をもらったからです。初めてそれを聞いた時はどんな顔をすれば良いか分らなかったの。

 ――で、現在。昨日の夕方から誘拐されて、運命だとか天使だとかわけのわからないことを言ってお屋敷に閉じ込められてますなう。いや、この時代だとなうって言っても通じないか。あと五年くらいしたら女子高生が「ナウでヤング」とか言いだすだろうけど、それでもまだ五年はあるんだよね。

 屋敷内の礼拝スペースは、ステンドグラス越しに日の光が降り注いで明るい。――その光の下にいる私を光の差し込まない場所から眺めてにやにやしているのが黄色い人もといDIOさん。凄く怪しいです有難うございました。名前を聞いて思い出したんだけどね、この黄色い人ってジョジョ三部の敵役じゃん。おじいちゃん早く来て!


「エマヌエーラ。さあ、グラッツェ・ミレを使うのだ」


 窓と言う窓に板が打ちつけられて暗い屋敷の中でこの部屋だけ明るいのは、DIOさん曰く「天使は光の下で見てこそだろう?」ということらしい。私のグラッツェ・ミレは天使みたいな見た目と能力のスタンドだし。でも「ああ、エマヌエーラ……このDIOに遣われし天使よ」と言われた時は鳥肌が立った。

 DIOさんは私のスタンド唯一の能力である「ハレルヤ」を見たいらしい。――見るからに下種っぽいのとか小悪党ですと言わんばかりの表情の人とか、十人くらいこの部屋に集められてる。DIOさんが見てるのがちょっと色んな意味で不安。

 スタンドにコーラスさせれば、スタンドの頭上に光の輪が輝いた。それと一緒に輝くDIOさんの顔……ちょっと可愛いと思ったけど口に出すなんて恐ろしいことはしない。

 スタンドの足元から巨大な木製の十字架が生じ、適当に選んだ一人を生贄に――って、デュエルしてるみたいな気分になってきた。まあ、その適当に選んだ一人に、私とDIOさんを除くこの場の全員の罪を押し付ける。するとその人は十字架刑に処され、何が起こったのかと暴れながら口汚い罵詈雑言を叫び、だけどそのままグラッツェ・ミレに担がれて昇天していく。彼がどこに行くのか、そこでどうなるのかまでは私も知らない。

 残った人たちは誰もが滂沱の涙を流しながら今までの罪を告白して行く。悪人顔は罪悪感にまみれて歪んでいた。……初めてこの能力を発動してしまった時は本当に混乱した。それまでゲラゲラ笑いながら人を殴っていたような大人が、私の足に縋り付いて泣きながら「グラッツェ(有難う)」を繰り返したんだから。それ以降、人が変わって聖人みたいな言動になったその人に、皆は彼の頭がおかしくなったんじゃないかって噂してた。


「素晴らしい! 予想以上だ……エマヌエーラ、君は本当に素晴らしい!」


 懺悔を聞かされてる私に、DIOさんは興奮した様子で拍手をしてる。えっと、この人って天国に行きたいんだよね? 六部以降はジョジョラーの友達に聞いただけだから良く知らないんだけど、DIOさんは天国へ行く方法を探してたはず。その方法は確か――自分の未来を垣間見ることにより自らの未来に対する覚悟を持つこと。今までよりも人の心が強くなる世界、それが天国、だったような。

 私のグラッツェ・ミレはそれの真逆で、過去に対する責任を持たせることで心を強くする。前を見るか後ろを見るかという違いはあるけど、結論として求めることは同じと言えるかもしれない。

 レオタードの人ことヴァニラ・アイスさんが部屋に入ってきて、私の足に縋り付いてキスまでしてる元悪人たちを見て顔を歪めた。気持ちは分るっていうか、私こそ泣きたい。気色悪いんだよ!


「ヴァニラ・アイス、こいつらを処分しておけ。――さあ、エマヌエーラ。来なさい」


 逆らってもヴァニラ・アイスさんに睨まれるだけなので、一つ頷いてDIOさんの元へ向かう。わざわざ片膝を突いてDIOさんは私を抱き上げ、喜色満面といった様子を隠すことなく私の顔にキスの雨を降らせた。


「君の能力はこのDIOの役に立つ。おやつは食べたか?――まだか。ならば共に食べようじゃないか」


 日の出と共に寝てしまったDIOさんは三時頃に起き出してきて、私のスタンド能力について調べるための実験をするように指示した。三時のおやつにテレンスさんが手作りのチョコケーキをくれるって言ってたから、実験でそれが流れたと聞いた時はショックだった。あの人の料理ってなんであんなに美味しいの?

 もう四時近いけど三時のおやつは三時のおやつだ。首振り人形と化した私にDIOさんは快活に笑い、小さな礼拝所を後にした。

 おじいちゃん、DIOさんに誘拐されちゃったけど、私は案外平和に過ごしてます。だから心配しないで、ゆっくり来てね! ケーキんまい!







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この出会いは運命だったのだ(震え声)
2013.06.10

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