ヴェー!



「もう、彬ったら!」







 私の兄こと優は手加減を知らない。手加減してよ、といってもあいつには手加減という概念がない。肘鉄されれば丸い青痣が残るし、頭を叩かれればタンコブができる。この男のせいで私の全身は痣だらけだ。悪気がないだけ質が悪い。来週来るという常連さんが離れを使いたいと言うから、その掃除を私と優の二人がすることになった。あまり離れは使わないし、私もあまり離れに来たことはない。なんていうか、雰囲気が荘厳で近づきがたかったから。


「あそこ、なんか神社みたいな雰囲気で怖いんだよね」

「ああ、分かるなぁ。あそこはどうしてもね、鳥居まであるし」


 離れは階段を二十段ほど上った上にあるから、本館よりも少し視点が高くなる。人目がないからリラックスできるってのが売りらしい。離れとはいえ広いから、一日や二日で掃除しきれるわけもなく、これから一週間、私と優は二人で毎日掃除だ。


「はあ、優と一緒かぁ……気が滅入るなぁ」

「もう、彬ったら!」


 階段を登り終え、ため息を吐きながらそう愚痴をこぼした。男でなければ女将に一番ふさわしいと言われてる優のことだ、細かいところまで注文を付けてくるに違いない。まだ埃の一つ掃いてないけど、想像しただけで嫌になった。優は私の背中をバシンと叩く。痛い。私は少したたらを踏み、階段から――落ちた。


「彬――!!」


 優の声が聞こえる。だからいつも、手加減しろって言ってるでしょ!









「あら……?」


 買い物からの帰り道リサとガスパールのをエコバックを前カゴにおいて自転車に乗っていると、公園の入り口で倒れている女の子を見つけました。年は十歳かそこらでしょうか?


「もしもし、君、大丈夫ですか?」


 遊び疲れて倒れてしまったなら微笑ましいで済ませられますが、脱水症状などでしたら大変です。私は少女を助け起こし、目を見開きました。少女は全身に痛々しい青痣を付けていて、顔色も悪く見るからに尋常ではない様子でした。


「大変です――通報するのは後で良いですね」


 小さい彼女は背負うのも楽で、落とさないように気を付けながら私は家に急ぎました。なによりも優先すべきはこの子を安静にさせること、運良く今日買ったのはナマ物ではなく生活雑貨。少々外に放置したところで腐りやしません。家まであと歩いて五分、走るのは危ないかと思い安全に、ですがなるべく急いで向かいました。早く寝かせて上げなくては……。

 もし、私が思ったように――この子が虐待を受けていたとしたら。見てしまったものを見捨てられるほど私は冷たくないつもりです。しかるべき施設に預けるか、引き取るか。臨時の保護者としてできる限りのことをしてあげなければ!











いろんな意味で「ヴェー!」と言いたくなる夢主の話。デフォルト名は彬ちゃん。カタカナのアキラもよいかもしれないけどとりあえず漢字で。05/06.2010

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