Be in touch with me4



 シャルとノブナガは、流星街にボランティアのために来てたのだそうな――イメージ総崩れ!! と内心突っ込んだけど、そう言えば慈善活動もしてるとか漫画に書いてあったような気もする。なるほど、悪徳マフィアの殲滅もボランティアに含まれるんだね。
 お互いに名乗りあいながら歩いて仮設ボランティア本部ならぬ仮アジトに向かえば、案外すぐ近くにアジトがあった。廃墟をアジトにするのが好きなんだろうか? 徒歩十分とか近いね。


「……徒歩ねぇ」

「『歩く』って字を入れんなら、どっちかってーと競歩だろ競歩」


 シャルとノブナガが何か言ってるけどさっぱり訳が分らないや。走るって言うのは息が切れるくらいにスピードを上げることを言うんだよ?


「えーっと、今日のこのボランティアってのは何人で来てるの? まさかシャルとノブナガとリーダーだけってわけじゃないだろうし、入る前に教えといて欲しいんだけど」


 心構えとか、あるでしょ? YOUの記憶をリードしちゃうわよパク姉さんとか、見敵即虐殺仕事人フェイタンとか、いるじゃない。


「ああ、今日ここに来てるのはオレたち合わせて七人。全身真っ黒ファーコートのクロロがリーダーで、見た目野獣なウボォーギン、フランケンシュタインみたいなフランクリン、金髪のスーツ美女がパクノダ、桃色の髪の女がマチ。今は、さっきの黒服の所属してるマフィア本部を壊しにパクノダ以外の全員が出払ってるよ」


 サイコメトラー・パクがいるのか……んん、私が無害だって保障をしてもらえるってことは良いけど、もし漫画の記憶まで読まれたらどうしよう? 「ここに来るまでどうやって生活してたの?」とか「これまであなたどうしてたの?」なら、この五年間の「オレは人間をやめるぞジョジョー!」なサバイバル生活を読まれるだけで済むだろうけど。


「パクノダさんとマチって人以外の名前覚えられた気がしないから、後でまた教えてね」


 それぞれの特徴を捕えてるから間違いようのない紹介だけど、一度で覚えたなんて思われたら無駄に警戒されるかもしれないし。二人と連れ立って廃墟に入れば、平屋の教会だったからすぐにパクノダとご対面を果たした。睫毛長いし鼻も高いし……美人いいなー、羨ましいなー。


「お帰り二人とも、早かったわね。ところで彼女は?」

「おー、オレらがヤる前にコイツが半殺しにしててよ。何もしてねーんだわ」

「面白い能力の持ち主でさ、団長が絶対会いたがるだろうと思って連れて来たんだ」

「初めまして、アルヤって言います」


 ボロボロの長椅子を立って右手を差し出してきたパクに握手を返す。


「私はパクよ。貴方はどうしてここへ?」

「いやー、五年振りの人類って言うか第一村人?――が誘拐されそうになってたんで、つい滅多打ちに、みたいな」


 正直にそう答えた途端、パクの笑顔が固まった。左手を目の前で振ってみるも反応なし。ど、どうした、何があった! 猫だましとか横やりなんてかけてないけど!?


「パク、どうした?」


 ノブナガとシャルが眉間に皺を寄せて声をかけ、やっとパクが通常状態を取り戻した。


「貴方……暗黒大陸にいたの?」

「暗黒大陸? 物騒な名前だね」


 なんだその物騒すぎる名前。人類なんて寄せ付けないぜ、こっちくんな☆みたいな名前の大陸だなぁ。もしくはダークマター的な厨二心をくすぐると言うべきか。


「人類の進出出来ていない大陸のことを暗黒大陸って呼ぶのよ」

「おーけー把握、私は暗黒大陸出身ってことだね!」


 グルメ界的なイメージで良いのかな。だけどあの大陸にいたモンスターで食べやすそうなのはあんましいなかった。川魚もなんか暴力的な見た目で食欲失せたし、耐グロ力がないと菜食主義に無理やり目覚めさせられそうな場所だし。


「暗黒大陸だぁ!? マジかよお前、すげぇな……ってことはよ、お前人類じゃねぇってことか!?」


 何故かノブナガが大興奮で食い付いて来たんだけど、そういうの好きなんだろうか。とりあえず「人間止めたって方が近いけどね」と頷いておいたら興奮度がマックスになってなんかヤバい。


「暗黒大陸には人型の別種がいるってことだろ? それもお前と同じくれぇ強い奴が!!」

「あの大陸にいた人型の生き物は私だけだよ。単に私は人間捨てたってだけであって、元はノブナガとかシャルと同じだからね?」

「よしアルヤ、オレと戦え!」

「え、やだよ面倒くさい」


 そういえば、パクに何故私のいた場所が分ったのか聞いた方が良いよね。ってことで、掴みかかってくるノブナガを蹴り飛ばして脇に寄せて、ノブナガが飛んでった方向を見てるパクを見上げる――背も高いし羨ましいな、ほんとに。私、日本人女子の平均身長だし! どうせ160ないよ。


「ねえパクノダ! どうして私が暗黒大陸から来たって分ったの?」

「……あ、ああ、私はちょっと人よりも知識が多いのよ。だから分ったの」

「ふーん? 良く分んないけど、そうなんだ」


 まあ、簡単に教えてくれるはずがないから当然って言えば当然だね。でもまあパクノダの言葉もまるきり嘘ってわけじゃないから良いか。人の記憶を覗くことができるパクの知識は深いだろうし。

 壁を破って飛んでったノブナガを助けに行くわけでもなく、シャルはぼろっちい祭壇の上に乗ってるビニール袋を漁り始めた。


「団長たちまだ時間かかるだろうし、何か呑みながら待とうか。――アルヤはお酒飲んだことある?」

「チューハイなら何度も。ビールは泡なら舐めたことあるよ」

「つまりほぼないってことか。どうするかなぁ……」


 馬鹿だな、シャル。女の子ってものは自分を可愛く見せるために酒量は控えめに言うものなんだよ。焼酎大好きだしワインも嗜むし、カクテルももちろんパカパカ空けるよ私は。ビール好きなんて言うとだいたいの男が引いちゃうから「私、ビール飲めなぁい」とか言うに決まってるじゃん。お酒は二十歳からとか言うけどさ、未成年でも親戚の集まりの時とか普通に呑むし。一升瓶とか醤油差しみたいにテーブル一周するし。


「何あんの」

「主にビール。それとウィスキー」

「じゃあウィスキーのソーダ割り……てかソーダ水あんの?」

「ロックもソーダ水もないよ」

「この度数だとストレートじゃかなりキツいと思うんだけど」

「そんなヤワな肝臓してないから大丈夫さ」


 修羅みたいな顔して走って帰って来たノブナガを叩き潰して横に放り投げたら、パクの視線がノブナガを追って放物線を描いた。でも助けに入らないあたりが彼らの掲げる個人主義ってものなのかもしれない。

 大人の体重を支えられそうにない腐りかけの長椅子を蹴飛ばして座るスペースを作り座り込めば、シャルたちも床の上に胡坐をかいた。


「どんくらい待てば他のメンバーが帰ってくるの?」

「二時間くらいじゃないかな。雑魚相手でも人数が多いだろうからね」


 そしてシャルたちと一緒に呑んでたら、シャルに「枠すらないしょんべん小僧」と罵られた。馬鹿だなぁ、女の自己申告を信用する方が間違ってるんだよ?









+++++++++
父方の親戚が遺産相続争いとかで物凄いことになった。母方は母方で距離的に遠すぎるから全然ない。=親戚付き合いなにそれ美味しいの。

面接が終わったら、Mistletoeの秋秀さんと呑みに行くんだ……(フラグ)。
2013.04.22

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