Be in touch with me2



 さて、五年間という長い期間をモンスターと戯れることで消費してきた私は、人間探しの旅に出た。自分探しじゃないところがミソね! 人間探しね!!

 人間並みの知力を持った人間サイズの蟻ツォプヘイルちゃんに次代ボスの座を譲ると言ったらツォルちゃん本人(蟻)に冗談抜かすな私には無理だと泣かれたから、仕方がないからボス代行ということにしといた。私以外がボスになるのは嫌なんだとか。ちょっとキュンってきたけど、人肌が恋しいから行くのは止めなかった。

 私の足でも半月はかかりそうな遠い場所に土地があることが分ったのは去年のことで、そこには人類がいるかもしれないと期待が膨らんだ。その期待が裏切られたら泣くかもしれない。人間捨てたんだからアメンボみたいに水面歩行も出来るんじゃないかって練習を続けて、寝てても浮いてられるようになった。――そして、今日、やっとその土地の近くまで来たのだっ! あと百キロくらいで着くんじゃない!? オラわくわくしてきたぞ! ってか、ビルが見えるし飛行船っぽいのも見えるし、人類がいるってことだよ!! やったよ!!

 一気にスピードアップして陸上に上がったは良いけど、ゴミの山だったというこの肩すかし。人類がいる証拠なの? それとも人類は滅亡しました証拠なの?

 人がいないよ、ゴミしかないよ……これはアレかな? 隕石により人の暮らしにくい世界になった地球を見捨て、宇宙へ飛び立った政治家たち。矮小な存在として見捨てられた市民たちは、必死に今日の命を繋いでいる。放射線とか紫外線とかX線とか色々ななんだろう、とりあえず「線」って付くものの影響で残された人類は新たな進化を遂げていた、とか!! ギャラクシーエンジェル的進化みたいな! つまりあの大陸のモンスターっぽい皆は元々人類――止めようこんな想像。

 人気がないゴミの山をいつも通り走って、第一村人発見! 第一っていうか複数です、ホシは複数です、どうぞ! とwktkしながらその群れを良く見たら、誘拐現場だった件。へー、愉快だなー……


「って駄目じゃん! 誘拐愉快じゃないよ犯罪じゃん!」


 走る勢いをそのままに突撃したら、子供を追い駆けてた黒服が音速で吹き飛んでった。空気の壁に当たる音がしたけど気にしない!


「何してんのあんたらー! 子供は天下の回り物だよ!!」


 あれ、お金が天下の回り物、だっけ? まあ良いや。

 大きな拍手みたいな音を立てて空へ旅だった仲間を見て、黒服の人たちは臨戦態勢を取る。


「何もんだ、テメー!!」

「何もんだって、人類捨てた永遠にピチピチの十八歳だよテメー文句あるか」

 実年齢はゲフンゲッフン!!

 呆然と私を見上げてる子供たちにニッと笑んで、ゴミ山に埋まってた錆だらけの鉄の棒を抜き取る。赤錆で表面はぼろぼろだけど使えないわけじゃない。それを一度ぐるんと振りまわし調子を確認して、打つべし、打つべしッ!!

 打つって言うより蛸殴りって言う方が近い気もしないではない。とりあえず動かなくなるまで滅多打ちにして子供たちを振り返れば、キラキラと目を輝かせて私を見つめてた。これぞまさしく正義のヒーローと子供の図だね! 背景がゴミの山じゃなかったらもっとそれらしかっただろうに。


「ね、ねーちゃんスゲー!! 何してるのか見えなかった!」

「凄い、凄い! 私にもソレできる!?」


 全身に怪我をいっぱいこさえた子供たちは私をぐるっと囲み、抱きついたりシャツの裾を引っ張ったりと元気一杯だ。ああ、青たんとか切り傷とかが痛ましい……私もよく作ったし、痛いだろうってことは良く分る。


「んー、お姉ちゃんは君たちよりもちょっと強いだけだよ。君たちもすぐ私に追いつける、大丈夫!」

「ホント!?」

「うん! お姉ちゃんはたった五年でこんだけ強くなったの。君たちは伸び代がたっぷりある年齢だからね、すぐに強くなれるよ!」


 歓声を上げる子供たちに笑みかけて、そのほっそい腕を手に取る。栄養不足ですって言わんばかりの体つき。――人類のいる場所だって言うのに、どうしてこんな子供がいるんだろう? これじゃあ、あの森で一人で暮らしてた私の方が、よっぽど良い生活を送ってた。嫌だなぁ、なんか嫌だ。腹の底から嫌だ。


「木の実があるんだけど、一緒に食べる?」


 BDのシステムがほぼ完全に再現されてるせいで、私の持ち物は所持品一覧というメニューから自由に出し入れできるようになってる。アイテムはもちろん、果物とか肉類も入るからとっても便利。

 食べる、と大歓声が上がり、早く出してと裾を引っ張り伸ばされた。一張羅なんだから伸ばさないで、これ以外に服ないから!! この五年で見るも無残にボロボロだからぁ!

 取り出したるは私の縄張りな森で見つけた、見た目は悪魔の実っぽいけど味は高級メロンにマンゴーの蕩ける深い味わいを足した感じで凄く美味しいうえ栄養価も高いという素敵な木の実だ。これには本当にお世話になった。それを二つ、手刀でパコーンと四分の一ずつに切る。あれだよ、死の線が見える的な感じで、どこを叩けば上手く切れるのか分るんだよ、慣れで。


「おいしー!」

「そう? 良かった。その木の実ね、お姉ちゃんも大好きなんだよ」

「こんなに美味しいの、初めて食べた!」

「おねーちゃん凄いねぇ!」


 子供たちははぐはぐと食べては私の強さや木の実の味を褒める。可愛いなあ、こんなに可愛い子たち初めて見るよ。バイト先のファミレスでは騒がしく憎たらしい餓鬼ばっかり見てたから癒されるわー! ってか五年振りの人類だよ!? テンション超上がるし!


「そうかなー、へへ、もっと褒めて良いよ!」


 褒められて伸びる子なんだよ、私。

 ちょっと抑えられなくて口元をニマニマさせながら頭を掻いてたら、後ろから突然笑い声が響いた。え、誰? 気配なかったし、私がこの距離で気付かないとかありえないし!







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きゃっち・みーから改題。書き溜め分の前半。
2013.04/19

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