Death shock



 ――コードギアスって何? 人類が一つになって幸せになれる未来を目指す敵側と、それを阻もうとする主人公側の戦いの話……それってエヴァじゃないの? え、違うの? 人型兵器が出てきてお袋さんがいなくて父親が敵ってどう聞いてもエヴァなんだけど。

『――今日からお前はロロ・ランペルージと名乗り、ゼロことルルーシュ・ランペルージの弟としてルルーシュ・ランペルージの監視に当たれ。分った?』

『イエス・ユア・ハイネス』

 ――言われてみれば似てるねって、エヴァほどの神アニメの設定忘れないでよ。主人公は家庭的で滅私奉公タイプでイレギュラーな出来事に弱い? どんだけ設定が被ってんの。


「おはよう兄さん!」

「ああ、おはようロロ。顔を洗ってきてからで良いから、皿と食器の用意をしてくれるか?」

「うん!」


 ――気付かない振り、してた。


「気付かない振り、してた」


 少年の、表情をそぎ落とした顔が洗面台の鏡に映る。先ほどダイニングキッチンで兄に見せた朗らかな笑顔はどこにもない。


「コードギアス、反逆のルルーシュ……ここがその世界だなんて、気付かない振り、してたんだ」


 監視の目は現在ルルーシュに集中している。また、洗面台付近に隠しマイクはない。独り言をするにはうってつけの場所だ。だからこそ彼は、ボソボソと呪詛を紡いでいた。それも日本語、否、イレブンの言葉で。

 彼がまだ日本人だった頃。彼は元々血管が弱く、血管に負担をかけるような行為、つまり運動などが出来なかった。運動さえしなければ至極平穏に過ごせていたし、それを不便だとは思ったこともなかった。突然視界が真っ暗になったのはきっと、脳の血管が詰まったか破裂したかのどちらかだろう。最後の瞬間にはクラスメイトの悲鳴を聞いた気がする。

 そんな彼が再び目を覚ましたのは、窓には鉄格子が嵌めこまれ扉には鍵がかかった部屋だった。鏡に映る彼の姿は日本人らしい黒髪黒眼ではなく、普通ではありえない薄紫の瞳に茶色い癖毛の子供。彼が驚愕のあまりテンカンの症状を起こしたのは仕方のないことだ。

 彼が憑依したのか転生したのか、成ってしまった子供は、ギアス嚮団という研究所の実験体だった。そして繰り返される実験の末に発現した異能、それは嚮団の主をおおいに喜ばせた。しかし、その異能には一つ短所があった。対象の時間を止めている間は本人の心臓も止まる。死と隣り合わせの能力だといえる。

 ――ぬくもりが欲しかったんだ、誰かに抱き締めてもらいたかったんだ。僕はモルモットじゃない、生きてる人間なんだから。話しかけて欲しかった、話しかけたかった、触れて欲しかった、触れたかった。人と触れあいたかった……!

 そんな中、任務によって得た人の体温は、彼にとってとても心地良かった。欧米人らしく大げさな程のボディーランゲージやスキンシップは彼の心を癒し、久方ぶりに降る雨を貪欲に吸う乾いた土のように彼を満たした。この任務に就いている間、彼は二度目の生を得てから一番幸福だと言えた。


「記憶なんて戻らなくて良いじゃないか、僕と兄弟でいてくれれば良いじゃないか。ねえ兄さん、僕たちは兄弟だよね……ずっと」


 ――アニメは結局見なかったけど、友達から概要は聞いて知ってる。最終話でルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはこの世の敵として死ぬ。そんなの嫌だ。


「兄さん、兄さん……兄さんっ」


 震える少年の肩を不安そうに見つめる影があったなど、彼は知らなかった。






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BL展開っぽい匂いがぷんぷんと……ルル×ロロ主、みたいな? 前に書いたネタが再び鎌首をもたげてですね、「疲れた頭には執筆が効果的ですよ」と囁いてきたわけですよ。ついうっかり書いてしまった。他の話のストックがあるので、もしかしたらそのうちストックを出すかもしれないでござる。
2013/04/16

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