聖☆おちびさん15



 試験開始からしばらくして、キルアが私の存在を忘れてゴンとラブラブしだした。私は巨大なオーラを持ってるだけで持久力とかは鍛えてないから、キルアに引っ張ってもらわないと合格なんて無理。神族だから廃スペックなんじゃないかと言われても、鍛えなければ神族であれ人類であれ軟弱なのは当然の話だよね。護身術は一通りできるけどマラソンは出来ないよ。

 周囲の受験生たちの目をコソコソと見て確信したんだけど、隙を見せたら性的に悲惨な目に遭わされる。周りは全員敵だと思って行動した方が良いだなんて、とんだデスゲームだね! 出来るならログアウトしたい!

 引っ張ってくれてたキルアが一目惚れ相手とウフフしてる中、私はどんどんと他の受験生たちに追い抜かれていった。私はマグロだ、止まったら死ぬ……止まるな、止まったら(主に性的な面で)死ぬぞ!!

 半泣きで右足左足と反復運動に集中して、今なら小宇宙(コスモ)を燃やせるような気になり始めた時。汗だくの私の体を誰かがヒョイと抱え上げた。


「ロード、どうしてこんなところにいるの」


 厨二病をこじらせたみたいな髪型と、怪しげな新興宗教に嵌った人みたいな表情が衝撃的な男――いや、イルミだって分ってるけど――が、凛として涼しげな声でそう訊いて来たから、ゼイゼイと荒い呼吸を落ちつかせながら両手を顔の前で合わせる。


「キルアに、誘拐、されちゃった。引きこもって、ばっかの、私が寂しいだろって」

「そっちに送ってる執事たち、ちょっと気が緩んでるんじゃないの」

「ハハ……怒らないであげて」


 走ってるうちにズレてたサングラスを戻す。ただでさえ肌の色とか身長とかで目立ってるんだし、これでサングラスが外れて顔がバレたらどうなることやら。想像するだけで恐ろしい。

 イルミは私を抱いてるにもかかわらず軽快な足取りが乱れる様子もない。試験開始から何時間過ぎたか知らないけど、これだけ走りながら息を切らせもしないなんて凄いよね。私なんてもうヘロヘロだよ。


「このまま二次試験会場まで行くよ」

「りょーかい」


 イルミが颯爽と追い越してく受験生たちが私たちの恰好を見るやギョっと目を剥いてるのを横目に、そういえばさっきから気になってたことを聞いてみる。


「顔に鋲を刺してる理由はまあ分らなくはないけど、体にも刺してるのはなんで?」

「体付きも変えてるから。顔の骨格と体の骨格の付き方に差がありすぎたら変に思われるだろ。顔の骨格に合わせて体の骨格も変えてる。それと体臭もちょっと変えた」

「そっか」


 イルミにはキルアと接触するつもりがなくっても、たとえば試験の内容で接触を余儀なくされるかも知れない。その時に匂いでバレた、なんてことになったらキルアが逃げちゃうもんね。ゴンほどじゃないけどキルアだって一般人よりも鼻が良いから。


「……それとね、イルミ、拾ってくれて有難う」

「別に、当然のことだろ? ロードはゾルディックに守られるべき存在なんだから」


 ソレ、ツナはともかくザンザスの前で言ったら喧嘩になるから言わないでね。







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ザ「ゾルディックに舐められてんのはテメーらのせいだ、ゾルディックともども死ね」

ツ「理不尽すぎる!!」

2013/03/21

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