月と味噌汁、そして死3



 肉団子でも食えば良いじゃない、と言ったオレに、いつも美味そうな匂いをさせていただろう用意しろと命令してくれた王。つまり料理しろってことか……クロロ君、お兄ちゃんは痛いのは嫌いなんだ。もう少し待っててね、どうにかしてクロロ君の元に帰って見せるから!


「王、美味しそうな匂いとは?」

「それをこれから用意させるのだ」


 ピトーが目をまん丸にしてオレを見る。猫の目がまん丸だと逆に違和感あるよね。


「コーヤが……? 恐れながら王に申し上げます。コーヤは兵の中では悪食で知られております」


 ピトーもっと言え! 王を肉団子に誘導しろ!!


「余が食したいから用意せよと言っておる。――貴様の名はコーヤというのか。コーヤ、余は空腹じゃ」


 名前まで覚えられちゃったオレはどうすれば良いの? もう諦めて料理すべきなの? 諦めたらそこで試合終了だって安西先生も言ってたけど、ここは諦めた方が良いっていうか王の目がささやいてる。そう言えば君の手がささやいてるって漫画あったよな、盲導犬の話だったか。


「分った。オレは王のナニーだからな、食事だって用意したら良いんだろ――しますわよ」


 ピトーたち三人、三匹? にギラリと睨まれたから言い直したら口調が変になった。王と三匹以外の全員を下がらせるようにお願いして、布をかぶせて隠してあったキッチンを出す。キメラアントだからか皆は肉食みたいだけど、トマトとかの野菜だって美味しいんだってことを教えてやろう。だけどお肉も美味しく食べたいからピザ焼こう! 生地は一昨日食べたのの残りがあるはずだし!


「チーズチーズチーズチィズぅ」


 マキシマム○ホルモンのFの替え歌を歌いながらピザ生地を伸ばす。けっこー、我慢したね、蟻、の巣の中で! 頭の中シェイクシェイクシェイク、帰宅したいライトナウオン! ちなみに、料理なら任せろ、料理歴何年になるかなんてもう覚えてないんだぜ――というオレにとって、片手でピザ生地を回転させて伸ばすなんて芸当は出来て当然なのだ。トマトソース塗ったピザ生地に玉ねぎとピーマンと鹿の手製燻製肉とチーズをのせる。

 そうして焼き上がりましたるはオレのお手製ピッツァ。かなり大きいし、十六分割が適当かね。


「あちっ……全く、オレに触れると火傷するぜ、なんて言いそうなピザだな。ハードボイルド過ぎる」


 溶けたチーズに触れた指が超痛い。皿を持って王の前にいつの間にか用意されたテーブルセットに向かい、さあ食えと差し出してやった。

 手を伸ばす王。そしてピザに触れようという瞬間、ピザの表面にゴルゴの顔っぽいのが浮かび上がった。


「オレに触れると火傷するぜ……」


 王を含む四匹の視線が、ピザとオレを往復した。ごめん。なんかごめん。とても申し訳ない気分だよ。







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 明日、というか今日。就活の試験。
2013/03/08

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