Be in touch with me



 天知る地知るお味噌汁。あんな電波系ソングな思考回路をしているわけじゃないけど、こういう時には頭をすっからかんにして歌いたくなる。純愛十字砲火か最終鬼畜一部声でも可。


「十字砲火、十字砲火」


 あなたのハート目がけてファイアッ! と馬鹿みたいに歌う。――周囲は広大な森、人目がないというか人気がない、ああ空はこんなに青いのに風はこんなにあたたかいのに太陽はとっても明るいのにどうして、こんな場所にいるの?(キリッ)すいみんすいみんすいみんすいみんすいみんぶそくっ!

 アニメは懐かし系メインで、音楽はサンホラーとアニソン、RPGは指を高速で動かす技能持ちじゃないので時間制限ありターン制のブラゲーが好き。勉強は実学派だから教室ではいつも睡眠学習、その代り漫画とか本で読んだ知識はしっかり覚えてる教師泣かせ(元担任曰く)。

 ――さて、どうして私は永沢君みたいな、家なき子になってるんだろうか。知ってた?永沢君ち、火災保険に入ってなかったんだぜ。

 まあ、火事で家のみならず全財産が焼失した永沢君は横に置いておいて、いま一番重要なのは『家を出てすぐ、目を閉じて開けたら住宅街が富士の樹海になっていた』理由について考えることだと思う。家はどこだろう。私が目を閉じた一瞬の間に街が王蟲の森に浸食されたなんてことはないだろうし、実は私が何らかの理由で気絶してる間に誰かが私をここに放置したなんてこともないだろうし。何が起きたんだかさっぱり分からない。


「……はあ」


 途中で歌うのを止めて、その場にしゃがみ込む。どこなのよ、ここ。スカートを睨みつける――あれ、私、こんな格好してたっけ。こんな可愛いブーツなんて持ってないし、スカートもなんかフリフリで見覚えがないデザインだし。

 右手に何か棒状のものを持ってることに今更気づいて、何を持ってるのか確かめてみ……うん? 翼がついたデザインのピンク色のマイク。三次元では全くだけど、二次元でなら見覚えがありすぎる。手袋も純白で縁は総レース。恰好は青と白メインのワンピースとくれば分からない方がおかしい。これは戦場アイドルの恰好じゃないか!


「私、いつ戦場アイドルにジョブチェンジしたの!?」


 ジョブチェンジと唱えた瞬間、なぜか足元に広がる魔法陣と宙に浮かぶアスタリスク――ハンゲのBD(ブレイブリーデフォルト)プレイングブレージュで今の上限レベル40までカンストさせた戦士、黒魔、ナイト、時魔、狩人、ヴァルキリー、赤魔、聖騎士、暗黒騎士、ガンナーがあった。スクロールバーがあったからタッチパネルに触れるような感覚でスクロールすると、レベル順にアスタリスクが並んでる。魔法剣士とかレベル15で止まってるし、レベル25あったモンクはついこないだガンナーのレベルアップのために食わせたし。持ってないのはソードマスター、忍者。カンストさせたアスタの中で唯一ないのはスーパースターだけど……もしかして。


「すっぴん!」


 唱えれば魔法陣が輝きだし、さっきまで着てた覚えのあるTシャツとボトムス姿になった。コンビニに行くだけだったから簡単な恰好しかしてない。そして目の前に浮かぶアスタリスクにスーパースターが増える。――想像の通りだ。

 ってことは、ここはブレイブリーデフォルトの世界ってことで良いのかな? でもジョブチェンジは神殿する必要があるし、なんか雰囲気が違う感じがするし。

 それから五年間。現実はターン制バトルなんて優しいことしてくれないから、そりゃあもう必死に頑張ったよ。ゴブリンとかドラゴンっぽいのはいたけど、ツォベラーとかスケールイーターとかはいなかった。ってことはブレイブリーデフォルトの世界じゃないってことだよね。

 森ではノミ・ダニ並みの跳躍力に蟻並みの腕力と人間並みの知力を持ったモンスターとか、とりあえずでかすぎて攻撃が届かないモンスターとか色々なのと出会ったし、ハンゲでのシステムそのままに三十分で一回復するエネルギーポイントに泣かされたり助けられたりしつつ生活してきた。今じゃこの森のボスだよ、凄いな私。ちなみに森は……凄く、大きいです。北海道なんて目じゃないぜ、日本全土でも足りないぜ。アフリカ大陸くらいあるんじゃないかな。

 まあ、その広大すぎる土地を一週間で回りきれる体力と脚力が付いたと気付いた時は、自分がいつの間にか人間を辞めてたことにも気付いて愕然としたけどね!







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 就職活動したくない……ゲフッ
2013.02/21

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