ROMANCE4
綾波レイモドキちゃんがシンジ君をお迎えに行って、帰ってきた。のけぞる様にしてピアノを弾いてるカヲル君はノリノリというか自己陶酔ここに極まれりって言うか……。テーブルセットを持ってきてその横で紅茶飲んでるオレのことなんて忘れてるんだろう、時々「イイっ!」とか呟いてるのが聞こえる。ちょっとヒソカと似てるかもしれない――自分の興味のある分野で興奮しすぎるところらへん。
モドキちゃんが戻ってきてから十五分くらいしただろうか? カヲル君がピアニストらしく傍目には体を大げさ過ぎるほどに揺らしながら鍵盤を叩いてるのをぼんやりと見てたら、カヲル君が顎を反らして上を見つめて微笑んだ。視線を辿ってみればシンジ君がこっちを上から見下ろしてる。オレも手を振ってみたけど気づかなかったらしく、すぐに顔を引っ込めちゃった。
「気付かなかったようだね」
「木の陰に隠れてたのもあったからね、仕方ない」
日光があんまり眩しいからと木陰にテーブルを置いたのが仇になったみたいだ。シンジ君はカヲル君しか見えてなかった――なんだこの少女向けアニメ展開。お互いしか見えてないとか典型的なラブロマンスの始まりじゃないか。
「ロマンスといえば……」
「ロマンスがどうしたんだい?」
ポツリと零したオレの言葉にカヲル君が首を傾げる。いや、『愛に気づいて下さい、僕が抱きしめてあげる』という始まりの歌があったのを思い出したんだよ。
「歌ってみてくれないかい?」
「はいよ。アカペラだから音を外しても笑わないでね」
一度歌いだすとオレは止まらないぜ!――ってのは冗談だけど、元歌のノリの良さとかを伝えられるようにテンション上げて歌ったらカヲル君が盛大な拍手をくれた。目をキラキラと輝かせてるみたいだけど、そんなに気に入ったんだろうか。
「素敵な歌だね」
「だろ? この歌を初めて聞いた時はオレも衝撃受けたよ」
マサルさんのOPだったこともショッキングって言えばショッキングだけど……なんて言うの?『こんな歌初めて聴いた!!』っていう目から鱗とか青天の霹靂とかそんな感じ。
カヲル君がロマンスを気に入ったためオレの歌った音程から譜面を起こそうということになり、何度となく歌ってはカヲル君がピアノを弾いてオレが修正して……ということを繰り返した。元歌が良いからピアノアレンジも爽快感があるね。
「最後にもう一度通して弾くから聴いてくれるかい?」
「一度といわず二度でも三度でも良いよ。でもそろそろお腹が空いたから十度とかは止めてね」
完成を見たピアノアレンジを最後に一度通して弾いて、楽しかったと表情を輝かせるカヲル君と二人でオレの部屋へ引っ込む。机の上に出しっぱなしのものを見て、そういえば夜更かしして作ったものがあったんだと思い出した。
「そーだそーだ、忘れてた」
――オレ特製ATフィールドお守り。なんてったって効果は実証済!! 簡単には死にそうにないクロロ君とか、殺しても蘇りそうなヒソカとかでさえ死を覚悟するような攻撃から命を守ったからね! ただ、一度使ったら補修不可能なくらいバラバラになるから一つにつき一度しか使えないけどね。
「はいこれ、お守り」
ちなみにATフィールドの中和は心の壁を壊すことだから、「あなたと合体したい……」という好意の押し売り染みたことをしているのとほぼ一緒。あのTVCMで味噌汁を噴いたのはオレだけじゃないはず。
人間相手にATフィールドを中和したらロミジュリみたいな大恋愛になるか、ロミジュリの実家同士みたいな嫌悪しあう間になるらしい。使徒が相手だから恋愛に発展せずに済んでるんだとか。
「お守り――神社で売っている、学業成就、交通安全、無病息災などの願いを込めた布製の小袋のこと……だったかい? でも神社の名前がないようだね」
「神社のお守りは『売ってる』じゃなくて『授与してる』って言うんだよ。神社は商売じゃないからね。それと、お守りって言うのは神社で頂くものだけじゃなくて、親や身近な人が相手の健康や安全を願って渡した物もお守りって呼ばれるんだよ」
つまり、正方向の願いが込められてたらハンカチやガラス玉だってお守りになるってことだ。負方向の願いが込められてたら呪具になるけど。
「なら、このお守りは幸也が僕の健康や安全を願って作った物ってことだね」
「そうそう」
カヲル君はオレのお手製お守りを眺めつ透かしつひっくり返したり斜めにしてみたりと興味深々だ。おもちゃを買ってもらった子供みたいな目をしてるのが年齢相応で愛嬌がある。
「有難う。君の好意はとても心地良いよ……つまり、嬉しいってことさ」
照れ笑いを浮かべるカヲル君が可愛くてその頭を撫でれば、髪の柔らかさに手を離せなくなった。
+++++++++ ここ数日、ライブに気が持って行かれて全く書けなかったゴミン(´・ω・`) そしてここでやっとROMANCEの解答。PENICILLINのロマンスです。 11/26.2012
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