赤ちゃんとボク20



 イルミとリンネが六点を集め、そろそろボクも三点を稼ぎに行こうかなと立ち上がろうとした、その時。イルミがリンネをボクの膝から盗んだ。


「というわけで、リンネとオレは試験終了まで寝て過ごすから」

「何がというわけでなのかな☆ リンネの粉ミルクと離乳食のセットを持ってるのはボクだからね☆――その手は何だい?」

「ん、粉ミルクと離乳食、頂戴」

「頂戴じゃないよ」


 バンジーガムでリンネを上空に飛ばしてから手元に引き寄せる。リンネが何か物言いたげな目を向けてくるけど、今はイルミと話してる最中だからもう少し待つんだよ。


「子供の扱い方がなってないよ、ヒソカ。赤ん坊はもう少し丁寧に扱わなきゃ」

「その通りだぞパパ。突然の逆バンジーに流石のオレもびっくりだ」


 正面と手元からの文句を受けて、何か悪かったかなと今さっきの行動を思い返してみる。物のように扱ったのが悪かったのかな?


「ボールみたいに扱ってゴメンネ、リンネ。でもイルミがボクの膝からキミを盗まなければあんなことはしなくて済んだんだ☆」

「責任の押しつけ、恰好悪いよヒソカ」

「そっちこそボクに責任を擦り付けないでくれないか☆」


 肩をすくめて溜息を吐くポーズをするイルミに蹴りを放つも、腕で受け止められたうえ吹き飛ばされる。宙で一回転して着地。水辺を走りながらリンネを奪い合う。ボクの手からイルミの手へ、イルミの手からボクの手へ。

 五分もそんなことをしてただろうか、突然リンネが暴れ出した。


「猫の子か毬のように振り回しやがって、オレは一人でも歩けるし意志もあるんだぞ!」


 腕の中のリンネは十四歳の姿になるとボクの腕から滑り抜けた。吊り上った目でボクたちを睨む姿はまるで、毛を逆立てた猫みたいだ。


「オレは自分のことくらい自分でなんとかできる! パパともイルミとも一緒に行動しないからな!」

「えー」

「えーじゃねぇ!」

「キミのせいだよイルミ、キミがリンネを盗ろうとするから☆」

「オレが悪いの?」

「ウン☆」

「イルミも悪いがパパも悪い。オレは最終日まで一人でいるからな」


 むすくれた顔で、幻術を使ったんだろう、忽然と姿を消したリンネ。ああ……猫っ毛が、柔らかいほっぺが。

 変わらぬ無表情で「あーあ」と呟くイルミを振り返る。腰に手を当てて顎を引いた。


「キミのせいでリンネが家出しちゃったじゃないか☆」

「ヒソカが始めに折れればリンネは家出しなかったよ」


 お互い引きそうにないと分かって肩を落とす。


「仕方ない、点数集めに行ってくるよ☆」

「いってらっしゃい」


 手を振るイルミにヒラヒラと手を揺らして、三点を集めに出た。





+++++++++
 リンネ離脱。ヒソカは果たして、六点を集めることができるのか……。
10/08.2012

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