臨死憑依記
死にそうな位お腹が痛くて、この痛みは尋常じゃねぇ! と母親に訴えたら笑いながら陣痛じゃないかと流され、父親に助けを求めたら気のせいじゃないかと一蹴され、姉さんに一縷の望みを託したら真っ青な顔して救急車を呼んでくれた。触診受けて盲腸だと分かって直手術となった。あのババアジジイ、手術が無事終わったら覚えてろ。
そして私は全身麻酔で安らかに眠り――そのまま目覚めなかった。
「四代目……クシナ様は、クシナ様は」
「言うなっ!――ああ、クシナ……有難う」
「四代目」と「クシナ」。ナルトか? 私はナルトの夢でも見てるんだろうか。それにしては視界が真っ暗だけど。「四代目」らしき若い男の声が、決意したように呟いた。
「クシナ。ナルトは英雄になるんだ」
右手が持ち上げられる感覚がして、薬指に柔らかいものが触れた。
「愛してる、クシナ。共にナルトを見守ろう」
私に聞こえるか聞こえないかくらいに小さく「四代目」は言い足す。――天国で、と。うわぁなんてラブストーリー! 夢のくせして映像がないなんて酷い、まだ映像だけなら無声映画として見られただろうに……。音だけなんて寂しいことするなよぅ。
「――九尾を、封印する!」
「四代目」が立ち上がる気配がし、どこぞへと去って行った。私は? なんで視点が主人公についていかないの? こういう時は「四代目」についてくはずだろ。ついていきたい! 原作! と思いながら、なかなか動かない腕を持ち上げた。
「(待てぃ波風)ミナト……ナルト(の封印シーンを見せてくれ!)待って(ってば)!」
カラカラに渇いた口を動かして、なんだか自分の声らしくない掠れた声で言う。言いたいことの半分も言えなかった畜生。
あれれ勘違い夢? 04/26.2010
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