赤ちゃんとボク13



 バンジーガムを飛ばして短刀を包み込むように捕まえる。たったそれだけのことなんだけど……ボクには珍しく焦ったからだろう、回転を弱めただけで取り逃がした。


「リンッ――!」


 ボクの声に反応して顔を上げたリンネは一瞬目を見開いたものの瞬時に対応した。少し顎を反らして息を大きく吸い込むや、呼気は白い炎を纏って短刀を襲う。炎は短刀を溶かすだけに留まらず、その熱気は滝のように爆発しボクや試験官を殴り付けた。――あ、試験官が壁に叩きつけられた。


「ごめん☆ おねむなのに邪魔をしたね」

「うむ、この試験官は一体何を考えているんだかな。こんな乳児にナイフを投げつけるなぞ大人として風上に置けん。俺はもっと平穏で横になれる場所で寝たいぞ、パパ」


 眠たそうに目を擦っているリンネに申し訳なく思って言えば、リンネは小さい体でアーミーナイフを投擲しながら可愛い我がままを言った。的にされた試験官がつまらない悲鳴を上げてる。


「なら彼も倒したことだし、さっさと地上まで降りてしまおうか☆」

「うむ」


 抱きあげればくったりと体を任せてくるリンネに少し笑う。死にきらず喚いている試験官にトランプを投げつけて殺し、階下への道を探した。



 結果はまあ当然の一着と二着。開始から六時間とちょっとで着いたけどリンネは風圧や振動のせいでグロッキーだ。


「吐きそう……」

「大丈夫かい?」

「あんまし。パパ、膝を貸してくれ」

「おいで」


 ぐったりした様子のリンネを胡坐の上に寝かせ、その柔らかい髪を撫でる。やっぱりリンネは体力を付けさせるべきだ。まだ生まれて二カ月なのに歩いたり話したりできることを除けば、そこらの赤ん坊とさして体格も変わらなければ体重も変わらない。化け物だと言えばそれまで――前世の記憶があったとしても、単なる赤ん坊であれば会話なんてままならない。


「お前は本当に不思議な赤ん坊だよね、リンネ」


 とっくに寝入ったリンネの頬を突いた。初めは面白いと思ったから拾っただけだったのに、いつの間にかこんなにも大切になっていたみたいだ。「捨てられる覚悟を決めるところだった」と言ったリンネの言葉で不安になるくらいに。


「だから、強くなるんだよ☆」


 ボクはリンネを手放さない。父親だからね、たとえリンネが嫌だって言ったって引きずりまわすよ。だから、殺されないくらいに強くなってもらわなくちゃね。


「イルミの家に一カ月、じゃ足りないかな?」


 まあ、基本を身につけたら後は実践できる場所に放り込むつもりだけど。





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 短い。それに意味不。
2012/06/17

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