赤ちゃんとボク7



 まだ幼鳥だろう鳥を捕まえた。首を刎ねたあともしばらく走り回っていたそれをひっくり返して血抜きをし、一瞬で羽を抜いて丸裸にする。まだ一歳にもならない幼い鳥のため筋肉は柔らかい。


「これをどうしようって言うんだい?」

「下味をつけて、揚げる。この森はやはり生態系がおかしい――どうしてここでショウガが取れたのかさっぱり意味が分からないぞ。有難いことには違いないが」


 ショウガを片手に変な顔をするリンネ。今更だけど料理はできるのかと聞けば、これからは男も台所に立つ時代なのよと言われ教えられたらしい。六道巡りって案外家庭的なんだろうか?


「他の受験生たちが魚を獲るまでに十分から十五分あるとして、それから正確な作り方が周知されるまで最低十分としても残り十五分もないな。世界は時短の時代だ……幻術でどうにかできねーもんか」

「……そこらへんはもうキミに任せた☆」


 リンネは頼りになるのかならないのかよく分からない。

 鳥肉を手に会場へ戻れば、受験生の三割が帰ってきていた。思っていたよりも時間がかかっているみたいだね。


「醤油にショウガ、ちと日本酒も入れてだな……景気づけだ、目いっぱい入れてやれ」


 ボールに入れた胸肉にドバドバと醤油をかけるリンネを横目に、手持無沙汰なボクは受験生を観察した。イルミには教えてやったほうが良いだろうか? まあ聞きに来たら答えれば良いよね。はたして魚を使ってないリンネの調理を信じるかどうかは謎だけど。

 受験生たちはサッと魚の表面を水洗いしただけで、酢飯にそれを突っ込んだりしている。どうやら彼らは川魚には寄生虫がいるってことを知らないらしい。まばらに受験生が会場に帰ってき、包丁と酢飯を片手に頭を捻っている。馬鹿らしい。


「とりま一個揚げてみるか」


 醤油漬けにした胸肉に溶き卵を絡ませ小麦粉をまとわせ油で揚げ始めたリンネを、他の受験生は馬鹿にしたような顔で見ている。――キミたちの方が馬鹿に見えるんだけどねぇ。想像してごらんよ、内臓も出してない魚を寿司飯と一緒に丸めてる馬鹿を。


「レオリオスペシャルだ!」


 馬鹿が一人、そんな無残な、料理ともいえないシロモノを提出して投げられていた。ああ、救いようがない。


「お、旨い。これで行くか」

「出来そうなのかい?」

「ああ。鳥のから揚げにはマヨネーズとご飯が良く合うってことを、あの試験官に教えてやるぜ」

「頑張ってね」


 合同で作っちゃダメとは言われてないし、ボクが鳥を捕まえて捌いたんだから全く関与してないわけじゃないし。

 とまあ、そんなことを考えてる時に寿司の作り方がバレた。あの禿げ頭、自分で自分の有利な点を捨ててどうしたいんだろうね?


「出来たぞパパ」

「そう? なら行こうか」


 握った寿司飯の上にマヨネーズとから揚げを乗せた、リンネ曰く変わり種のスシ。はたして合格になるのかねぇ……。





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 急いで書いたので誤字脱字あるかもです。
2012/06/06

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