赤ちゃんとボク5



 オレと似たような年齢のヤツが二十代半ばくらいの男と二人して楽しそうに会話していた。二人とも顔が似てるし、兄弟かもな。

 兄貴の方はずいぶんと突飛な格好で、トランプのマークをあしらった服にピエロみたいなメイクをしている。あんまり近づきたくないタイプだな……それにアイツ、血の臭いが濃い。同業者かもしれねー。

 対して弟は珍妙な格好の兄貴に比べて常識的なファッション――まあ、オーソドックスな襟付きの白い長袖にジーパンだけど――をしてる。でも取っつきやすいかと言うとその兄貴並みだ。目が冷たいっつーか、他人を同列扱いしてないのが見え隠れする目をしてる。ま、兄貴の方はそれ隠すのが上手いからだろうけどな。きっと中身まで同類な兄弟に違いない。

 丸鼻のトンパとか言うオヤジが親しげに声をかけてきたからジュースを頂く。そこらの毒なら効かねーしな。


「あの四十四番には気をつけろよ。あいつは去年の試験で試験官を半殺しにして不合格になった戦闘狂だ。それとあの四十四番の相方の子供にもな……あのガキ、この会場に入ってくるまでは赤ん坊の姿だったんだぜ」

「へえ」


 よくわかんねー。赤ん坊の姿?


「あいつは四十四番の肩から飛び降りたとたん、まるで魔法みたいに赤ん坊からあの大きさに成長しやがったんだ」

「へぇ……。おもれーな、それ」


 変身? 魔法? どんなマジックだよそれ。マジシャンってタネ明かししねーって言うけど教えてくれないもんかな。離れていくおっさんはもう視界から完璧に消して、オレと同い年か少し上くらいのヤツを見つめる。オレの視線に気づいたらしいヤツは少し目を見開いて兄貴の袖を引っ張ってオレを指差した。性能の良い耳が捕らえた二人の会話は――


「パパ、見ろ。オレと同年代の受験生がいるぞ」

「うん? ああ。本当だね☆ 友達になりたいのかい?」

「今のところ必要ないから別に。いやな、周囲を見ればむさ苦しい男ばかりだろう。どうせ見るならむさ苦しくないものを見たいと思ったんだぞ」

「まあ、そうだねェ」


 え……パパ? 親子!? 一体いくつの時の子供だよ!! アイツを十二歳としても、十代半ばの時のガキってことになるぜ!? つまりオレが四五年内にそういうことになるのと同じってことで、年齢で言えばブタ君がもう一児の父になってるのと同じことだろ。うわぁ信じらんねー。


「ところで、いつになったら試験が始まるのだろうな。オレはもう待ちくたびれてきたぞ」

「ならリンネ、ボクとトランプタワーでも作ろうか☆」

「知ってるだろ、パパ。オレがトランプタワーなんて苦手だってことくらい。しても苛々するだけだ」

「お得意の方法で作れば良いじゃないか☆」

「一瞬で出来ることをどう楽しめと言うんだ?」

「崩すとか?」


 子供の方――リンネってーの? は嫌そうに顔をしかめた。

 仲良さそうだなぁ、この親子。なんか羨ましいかもしれねーや……お互いを理解し合ってるってのが傍目にもよく分かるしな。あー、オレん家もこんくらい仲良し家族だったら面白かったのかもな。イルミはこえーし、ブタ君はどうしようもないブタだし、アルカはアレでカルトはお袋の手先。アイツ面白そうだし仲良くなれねーかなー。

 試験開始前にリンネが起こした奇術、全然タネが見えなかった。おもしれー! アレおもしれー!! オレもしてみたい!

 というわけで声、かけてやろっと。





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 キルアって比較的早いうちに入場したよね。
2012/06/06

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