Pink polaris!9



 二ヶ月も過ぎる頃にはボクもボクなりに力を付け、サワダに天空闘技場に出る許可をもらった。それでもまだ、サワダがそんなにしてお金を貯める理由を教えてもらえてないんだよね……兆を越えたら教えてくれるって言ってたけど。あーあ、早くサワダが一兆ジェニー貯めてくれないかな。

 それと最近、人やボクの周りに白い煙が見えるようになってきたんだけど、これってどうしたんだろうね? サワダなら知ってるかな……サワダは白い煙が溶けずにピッタリくっついてる。サワダみたいな人を他にも何人か見たけど、一番安定してるのがサワダかな。サワダなら何でも知ってるよね、きっと。

 言われてた座禅はとっくに一時間のノルマを終えた。今日のノルマはもう消化しちゃったから手持ち不沙汰だ……。


「ねえサワダ」

「うん?」


 何かの武術の型みたいなのを延々と繰り返してるサワダに声をかければ、あっけないほど簡単にそれを止めてしまった。一時間以上してたとはいえ良いのだろうか?


「えっと、止めちゃって良かったの?」

「十分汗をかいたからね。そろそろ休憩しようと思ってたし気にしなくて良いよ。で、どうしたの?」


 ボクが差し出したタオルを受け取って汗を拭うサワダは、運動神経が良さそうに見えない。それを利用しているんだと聞いてはいるし知ってもいるんだけどね……拾われてすぐにサワダと組み手をしたけど惨敗だったし、前に絡んできたゴロツキを皆殺しにしてたし。ラッキーボーイだと思われていた方が勝っても負けても角が立たない、とサワダは笑っていた。策士だよね。


「あのね、最近人の周りに白い煙が見えるんだ。サワダなら何か知ってるだろうと思って」


 サワダは一瞬目を丸くして、次の瞬間破顔した。


「流石はヒラだね、まだ修行を始めて二ヶ月なのに! それはオーラって言うんだよ。自分のオーラを操れるようになれば、オレと同じことはできないけど似たようなことができるようになるよ」

「へえ、詳しく教えてくれる?」


 サワダのオーラは誰よりも純度が高い。つまり、そのオーラとか言うのを練り上げて体を包めばサワダくらい強くなれるってことかな。


「その前にシャワーを浴びさせて、絶対長話になる。汗で体が冷えちゃうよ」


 サワダは風呂を指差して顔を拭いた。髪から汗が垂れて目に入ったらしく顔をしかめている。


「早く出てね」


 サワダは頷き、ボクの頭を撫でて風呂場へ向かう。白いシャツは汗で肌色が透けて、案外――って言うのも変だけど――鍛えられている体の線がくっきりと見える。あれだけ強いのにサワダが筋肉太りしていないのはなんだか奇妙だ。ジャポン人は誰も彼も細身だという眉唾話を聞いたことがあるけど本当だったのかな? ボスがヤマトナデシコを囲っているとかって噂と一緒に聞いた話だし、どうなんだろ?

 サワダがシャワーを浴びる音が漏れ聞こえてきた。天空闘技場の選手部屋の壁、薄いよね。シャワーの音なんてそこまで大きくないはずなのに。まあ……隣室との壁は厚いから良いけどさ。部屋の中で暴れる人もいるから床下に鉄板をしこんであるらしいし、天空闘技場ってホントに奇妙な場所だと思う。


「出たよー」


 サワダは濡れた頭にタオルを乗せて出てきた。テーブルにボクを呼んで向かい合って座る。


「じゃあ、その白いもやについての話から始めようか」


 順番は横に置いておくとして、特質系、強化系、操作系、変化系、具現化系、放出系の六種類があるらしい。それぞれ名前が示す通りの傾向があって、その傾向に合わせた能力を作ることが一番使い勝手が良くなるらしい。うーん……ボクの希望としては変化系だけど、具現化系も面白いよね。


「きっとヒラは変化系だとオレは思う。でも実際に調べてみないと分からない」

「性格とかで分かるの?」

「うん。大ざっぱに言えば、変化系には特徴的な人間が多いんだ。強化系は単純馬鹿、とかいうのもあるよ」

「サワダは?」

「オレ? 秘密」


 クスリと微笑んで唇に指を当てたサワダに、どうしてかゾクゾクとした興奮が背中を走った。サワダはやっぱり、面白い。





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 久しぶりに桃星更新!
2012/05/29


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