聖☆おちびさん・ロリの憂鬱



 目が覚めたら、協会はてんやわんやしていた。というか誰かの叫び声で目覚めた。


「この騒ぎは一体……?」


 今はまだ日も昇ってない未明。騒ぐには早すぎる時間帯のはずだし、一体全体何がどうしたんだろう? ただでさえ好本さんのせいで熟睡できてないっていうのに――


「ロ、ロード様!」


 そう大声で私を呼びながら現れたのは協会のコールセンター主任で、予想に違わずロリコンだ。以前、興味半分で電脳ページで『聖女教』ってググったら『ロリコンが大手を振って歩ける聖地』ってアンサイ○ロペディアに書かれてた。残念ながら嘘じゃないのが悲しいところ。


「どうしたの、コールセンター主任?」

「大変です! つい二十分ほど前、世界各地の預言者達が揃って『ロード様は誠に神の娘となられた』と発言! ロード様への取材を求める出版社からの電話や支社からの確認電話、民間からの祝い電話、ロード様を頑なに認めてこなかった宗教団体からの嫌がらせ電話などでコールセンターはパンク状態です!!」

「何それ怖い」


 主任は困り果てた顔でテレビ会見を開いてほしいと言った。


「ロード様が一度会見を開いてくださったら少なくとも取材要請と民間からの電話がなくなります。その代わりプレゼントなどの郵便物が山を作るでしょうが、私の管轄ではありませんから問題なしです」


 そう胸を張るコールセンター主任。郵便物の管理を一手に引き受ける郵送物管理課の主任とは犬猿の仲で、それぞれ『プニプニほっぺをつつき隊』と『上目遣いされ隊』の隊長らしい。はっきり言ってどうでも良いというか、仕事に私情を持ち込むなと言いたい。公私の区別付けようよ。萌えの嗜好で張り合うのは別の場所でこっそりしといてほしい。


「はぁ、分かったよ。なら六時半に臨時会見を開くって通達してくれる? 放送業界からの電話はそれでとりあえず収まるでしょ」


 時計の針はまだ五時十分を指してる。あと一時間とちょっともあれば会見の用意もできるだろうから時間の余裕はあるはず。――協会内には会見用の見た目は立派な部屋が作られてて、まるでどこぞの総書記みたいに私の写真が掲げられている。本気で止めてほしい。その写真のせいで他の宗教団体さんたちが聖女教に強硬に反発してるってことが分からないんだろうか? そして、何より私の精神力や気力をガリガリと削ってるってことも。

 主任はとても良い笑顔で頷き、私の寝室を出ていった。

 何故だろう、朝一番から空しいのは。


「やっぱり断った方が良かったのかもしれないな……」


 まるでどうしようもないロリコンの巣窟、聖女協会。そんな組織を立ち上げた時点で間違っていたのかもしれないと思うと、三百年前の行動が悔やまれてならない。でも、両親が私を『神の娘』って宣伝してたから便利だったんだよ? 宣伝はすでに両親がしてたから名前は知られてた。全く無名で怪しげな子供が「貴方の怪我や病気を直します」なんて言ってもね、追い出されるだけだし。ゼロから再スタートするよりよっぽど楽だったんだもん。


「全部自業自得ってわけか」


 いや、でも好本さんがオーラを大量に買わせたりしなかったらここまで悪化しなかったかも。百二十歳くらいで大往生してたかも。彼女のせいっていうのもあるね。あんなにはっちゃけてる人だとは思わなかったよ……騙された気分。流されて受け入れたとはいえ、神の娘なんて立場は面倒くさい。けど認めなきゃ駄目だよね、実際になっちゃったわけだし。三百年の人生経験は伊達じゃないんだよ。諦めることと受け入れることはもう慣れっこなんだ。


「はぁ」


 女中さんが持ってきてくれた服は真っ黒なゴスロリでピンクの花のコサージュが付いていた。諦めて受け入れる代表例、それがこれだよ……。





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ポメラ執筆分を比較的簡単にうPできた。スマホのバーコードリーダーアプリ重宝するなぁ!
2012/05/26


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