あねおと



 姉貴の我が儘に付き合わされてもう十余年。大概のことには動じないつもりだったけど、流石にこれはなぁ……。


《君の姉はトリップ体質を願った……君は何を望む?》

「え、地上に帰しては――くれそうにないっすね」


 チリ一つなく、目に痛い程の白さを誇る……誇ってるかは謎だが、まあめっちゃ白い室内。気がつけば俺は、病院にあるリクライニングベッドを更に近未来的にしたような寝台に横たわっていた。そこに現れた見たこともない多脚動物――深海にいそうな見た目だ――によってなされた、現状についての解説……。なんと、俺は姉貴と融合してしまったらしい。この多脚動物は誤って俺たちを挽き肉にしてしまい、再生させたは良いものの俺たちの遺伝子情報がほぼ同じだったため誤って一人に融合させてしまったとのこと。なんだよこいつドジっ子属性か?

 ついでにこの多脚動物の話を疑うという選択肢はない――現在俺の体は姉貴のそれだからだ。女体化は二次元に限る。俺が女体化して美味しい思いをするのは姉貴だけだ!! くそ、ぱいおつなんぞいらん!


《地上に帰すことは不可能ではない。しかし、我々は今まで地球を観測してきたが、今の君たちのような人間を放っておくとは思えない。良くてワイドショーのネタ、悪くて実験用モルモットだろう》

「なるほど」


 言われてみれば、そうだとしか言い様がない。昼間は女で夜は男な人間なんて普通の人からすれば怪物だ。


《だから、君たちを地球に帰すと言う選択肢は私としても勧めたくない。身寄りも個々の肉体も奪ってしまった私の謝罪など聞いて楽しいものではないだろうが、何かさせてほしい。さあ、君は何を望む?》


 多脚動物の声には申し訳なさがこもっていて、まあ誠意も見えるし信じても良いだろう。


「なら、俺の知ってる漫画やアニメの技を使えるようにしてくれ。姉貴のことだから幸運補正は付けても、どんな環境でも適応するための能力とか全く決めてないだろう」

《彼女が願ったのは好きな世界にトリップできるというトリップ体質と、幸運値カンストの黄金率だ》

「ある意味において最強すぎる設定だな……」


 だが、幸運ではどうにもならないことなんて沢山ある。


《君の願いは幅が広すぎる。ある程度の制限を設けなければならないが、どのような制限を作る?》

「――んー、なら作品や技を指定するってのはどうだ? ドラ○ンボールのなんちゃらとかエ○ァンゲリオンのどっちゃらとかさ」

《それならば可能だ》


 うしっ!


「なら、ドラゴ○ボールのサ○ヤ人の体質、エ○ァンゲリオンのATフィールド、ナデシコのナノマシン、ナルトの忍術、蛙軍曹の……」


 とりあえず便利そうな能力を挙げていけば多脚動物が苦笑する気配がした。


「なんだ?」

《いや……君は子供のようだな。夢に溢れている》

「んー、そうか? かなりがめつくて欲にまみれた人間だと思うんだが」

《いや、君の目は夢や希望に溢れている。その心を忘れないでほしい》


 多脚動物はそう首を振り、俺に寝るように促した。


《君たちが眠っている間に全てを済ませておこう。今はもうお休み――》


 そして寝て起きたら鳴門の世界だった。姉貴は幸運補正のお陰かあっさり信用され、仮宿として火影邸に泊まることに。でもさ、姉貴。どうして俺のこと話さなかった訳……めっちゃくちゃ疑われて四方八方から睨まれてるんだけど!? しまいにゃキレるぞんにゃろー!





 そしてこの後ぶち切れ、屋敷は全壊(´・ω・`)
 案外書きにくかった!


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