MY LOVELY NANNY!side.Y
父さんのストーカー……じゃなかった、嵐の守護者である隼人によれば、僕の新しいナニーが見つかったらしい。
「嫌だよ僕、ナニーなんて。ボンゴレだからって擦り寄ってくる奴等ばっかりじゃないか」
「お労しや吉宗様……!」
だけど隼人はそう言って泣くばかりで役に立たない。
父さんの超直感があるんだからナニーの選別に問題ないかといえば、そんなわけない。スパイや暗殺者は超直感でふるい分けることができるけど、ボンゴレに寄生しようという寄生虫に関しては悪意がない分見付けづらいらしい。今まで来たナニーの八割はスパイと暗殺者と寄生虫で、残りの二割は父さん狙いだったけど母さんの前に破れていった。今度のナニーはどんな女なんだろう? せめて父さん狙いの女じゃないことを願う――父さん狙いの女だと、砂を吐きそうなイチャイチャを「僕も」見させられるからね。
締めて七十八人目のナニーに、僕は期待なんて全くしてなかった。今までと同じく一日でサヨナラだと思ってた。だけど期待は裏切られた……もちろん良い意味でね。
「お姉さん何してるの?」
ナニーが待っていると言う客間に入れば武や雲雀さんと同じ真っ黒な髪に焦げ茶の目をした女が小さくなってた。椅子の上で膝を抱えて、泣きそうな顔で震えてたんだ。
「うぇっ!?」
飛び上がって驚いた様子の彼女になんだか気が抜ける。勢い良く顔をあげた反動で涙が、ぽろりと彼女の頬を伝っていった。
「ど、どなたでしょうか!?」
「えと……お姉さんはナニーだよね? 僕、僕の新しいナニーに会いに来たんだけど」
「う、嘘じゃなかったんですか!? 実はここは極悪なヤの付く自営業のお宅で、『へっへっへ、馬鹿な東洋人め。お前なんて人身売買してやるよ。せいぜい言葉の通じない外国で怖がるが良いぜ』とか思ってるかと! ああ良かった、勘違いだったのね」
前半は合ってると知ったらどう思うんだろう? 泣きながら「うちに帰してください!!」って泣くかもしれない。
それにしても彼女は感情表現が大きい。二十歳って聞いたけどそれより幼く見えるな……。
「こほん! 改めて初めまして、私は美枝って言うのよ。君は?」
「僕は沢田吉宗です。よろしく、美枝さん」
美枝さんはなんていうか、暖かい人だった。母さんは底無しに人を受け入れられるタイプだけど、美枝さんは受け入れる相手を取捨選択して包み込むタイプっていうのかな……。敵も受け入れちゃう母さんには尊敬できる点もあるけど、それでやきもきしてる父さんや皆も知ってるから。――うん、美枝さんは及第点!
「美枝さん、お茶飲んで話さない?」
「うん、有難う吉宗君!」
美枝さんは目元を綻ばせた。笑った時に出来る目の下の皺がなんだか愛敬がって可愛い。
メイドにお茶の用意をさせてる時に「相手に気を使わせてどうするの!? 私って、私ってぇぇぇぇ」と小さく自分の頭を小突いていたのを見た。
――どうしよう。女の子を可愛いと思ったのは初めてだ。
+++++++++ 年下から見て可愛いお姉さん――に見えたら良いなぁ。 2012/05/02
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