ウォンカ!3
二次試験から増えた私に気付いた受験者達がいぶかんだ顔をする。私はどう見ても十代後半か二十になったばかりくらいにしか見えないし、隆々とした筋肉が付いているわけでもない。でも私に声をかける者はない――ヒソカとギタラクルが傍にいるからでしょうね。私も知り合いでなければ関わり合いになろうとは絶対に思わないでしょうし……当然の判断だわ。
「十二時まであと少しね。あー……I’m tired of waiting(待ちくたびれる)。試験始まらないかしらmore earlier」
「あと五分だよ」
「その五分が長いのよ」
私達を見る目に気付いてそちらを向けば、キルアが顔をそむけた。何かしら?
ヒソカが手に付いたチョコレート滓を舐め、銀紙を指の摩擦熱で燃やす。ちゃんとゴミを捨てられる子は好きだわ。
「そういえばI didn’t give 私のname。私はLily, Lily Wonka! リリーって呼んでちょうだいね」
「分った。ボクはヒソカだよ☆ ウォンカ社には何度か手紙を送ったことがあるんだけど覚えてるかな……ドッキリラブって名乗ってたんだけど」
ウォンカ社には公式ラジオが存在する。パーソナリティを任せた声優がノリノリで好き勝手始めて、ウォンカのお菓子ファンからの手紙も読み上げたりもしてるのよね。彼は――まあ、悪い子じゃないけど突っ込みどころが多いかしら。「旅団や殺し屋一家とは関わり合いになりたくありません、ミルキ以外」とキリッとした顔で宣言した時には彼の将来が心配になった。
「常連さんじゃあないの、貴方」
「うん☆」
チャーリーが忘れずラジオを付けてくれるから、毎週忘れず聴いている。ドッキリラブさんは三年前の番組開始から頻繁に読み上げられている常連さんで、なかなかスリリングな毎日を送っている人だなぁと思っていたのだけど……まさかヒソカだったなんて。
「毎週楽しみにしてるよ☆ 彼の声も好きだしね☆」
「伝えておくわね」
ヒソカからラブコールがあったと聞いたら奇声――悲鳴を上げて私を罵りそうだけど、まあ私が気にすることでもないし。私の年齢を知った瞬間「ロリババア乙」とか言ったのが悪いと思うのよ。
「あら、もう十二時」
ヒソカと話しているうちに時計の針は十二を指し、重い音を鳴らしながら扉が開いて行く――
「どお? おなかは大分すいてきた?」
「聞いてのとおり、もーペコペコだよ」
知り合い二人が建物の中にいるのを見てつい笑う。ネテロを介して知り合ったのよね、二人とは。私がウォンカの社長だと知るやメンチちゃんに至っては拝みだしたからびっくりしちゃったわ。
「オレのメニューは――豚の丸焼き!! オレの大好物」
この試験では念の使用は禁じられている。でも、それは攻撃的な念に限る……私の念は攻撃目的のそれではないから問題はない。
【工場長の秘密(シークレットレシピ)】:その食材を一番美味しく調理するレシピを直感的に思い付く能力。手元にある調理器具・調味料のみで可能なレシピを思い付くことも可能。……豚の丸焼きという指定があるけど、それでもこの能力を阻害することはできないわ。
「料理は専門じゃないのだけど……はぁ」
試験なんだから仕方ないわよね。
直感というよりも天啓に近いそれに従って調理を進める。豚には寄生虫が多いからちゃんと加熱する必要があるのよね。内臓を取り除き、肉を軟らかくするために振り回して何度も木や地面に叩きつける。サイズが大きいから不便だわ。それから雑草にまぎれて生えてる香草や自分用に持ってきていた調味料を使って味を付けて、丸焼き。
「遅かったね」
「ええ、ただ焼いただけのものを出すなんて調理をする人間として我慢ならなかったのだもの」
とっくに試験を通ったギタラクルが首を傾げたのに答え、ブハラの元へ出る。二人と話すのは久しぶりだわ。
+++++++++ 70万打リク。僕の書く話は料理が良く出ると言うことに今さら気が付いた。実はウォンカにはサイドストーリーがあるのよ……。 2012/04/28
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