XANXUSってのは10×10じゃなくて10の10乗なんだ覚えとけA



 いつも通りの会議室は『会議室』とは名ばかりに、単なるだべり場と化している。防弾ガラスから射し込む夕陽がボスを背中から照らし、闇のように黒々とした髪が死ぬ気の炎の色に染まっている。普段から饒舌にオレたちを鼓舞し心酔させるボスだが、今みてぇに深慮に沈む姿も神々しいぜ。

 見惚れていたオレたちに注意を割くこともなく、ボスは何かしら思い出したらしく口元を弧に歪めた。


「いつもうぜえ門外顧問とこの餓鬼が日本に行ったらしいじゃねぇか」


 つい数十分前にオレも同じ報告を受けている。日本に大事な用でもあんのか門外顧問自身も飛ぶ用意をしているらしい……。この半端な時期に一体どういうつもりなんだぁ?


「リング……」


 だが疑問はボスの言葉で氷解した。家光が日本に家族を持っているということぐれぇなら同じボンゴレ、スパイを送る必要もねえ。家光は初代の血筋、子供がいれば継承権を有している。だが何故こんな時期に? 考えろ……中途半端すぎる。新学期が始まる九月ならまだ分からんではねぇのに十月である必要性を。

 ボスはこのあいだ二十二歳になったばかりだ。が、十代半ばから積み上げた経歴は同年代の奴等を大きく引き離し、年齢的にも継承に相応。そろそろドンの座を継がせても、と考える奴は多いからなぁ……ヴァリアーと幹部連中を牽制する目的か? 日本の候補者がいくつかは知らねえが、ぬるま湯の国日本にいるっつーことはまだ経験と年齢が足りないとみた――実力が足りないなら地位で補う。九代目や門外顧問のクソ野郎なら考えそうなこった。内心歯をギシギシ言わせていれば、ボスがオレに声をかけた。


「おいカス、今すぐ門外顧問の餓鬼を追え。どうせフェイクだろうが向こうはあいつらにリングをくれてやろうとか馬鹿な事考えてやがるに違いねぇ。老衰も大概に……いや、門外顧問に責任全部押し付けるか。これを機にファミリー内の汚物を一掃すんぞ、テメーら」


 つまり『九代目のジジイは門外顧問を抑えきれなかったが、ヴァリアーのボスであるザンザスにはその暴走を抑える力がある』と示すわけだなぁ! 年を取り他を牽引できなくなった親父馬が、若く力ある新しい親父馬にその場を明け渡す……幹部連中も納得しやすい流れだぁ。

 ところで門外顧問の餓鬼は確かネギだとかなんだとか言う名前だったか?


「あ゛あ゛! あの薬味みてぇな名前した餓鬼だったなぁ――三枚に下ろせば良いのかぁ?」


 ボスは使えると判断した奴は拾う人間だぁ。ボスに『お前(の能力)が俺(の覇道)に(どっちかってーと)必要だ』と言われてヴァリアーに入隊した奴等は隊員の半分にのぼるしな。全員ボスのためなら死ねる。


「そんくらいは自分で考えろカス、テメーの首に乗ってやがるのは脱脂綿か? あれは家光の秘蔵っ子だ、生かしておく必要がねぇだろカス!! 禍根っつーのは残したら膨らむ分うぜぇってことくらい分かれゴミ野郎」


 普段は使える人間とそれ以外を選別して斬らねぇとならねぇからいらん気を使うが、つまり今回はそういったことは気にせず暴れて良いってことか。ボスはオレにストレスが溜まってんのに気付いてたんだろう、ついにやけちまうぜぇ!


「分かったぞお!」


 大きく頷いたオレにルッスーリアが我が事みてぇに嬉しそうに笑んだ。


「スクアーロちゃん羨ましいわ、愛されてるわねぇ」


 愛よ! とクネクネしだしたルッスーリアに苦笑が漏れる。

 ボスの口が悪いのは元からだからまあ気にすることじゃねぇ。禍根を残すなっつーのはオレたちの身を心配しての言葉だろう……命令したのはボスでも、命を狙われんのはオレや部下だからなぁ。

 レヴィがボスに心配してもらえたオレを羨んで睨んできやがった。ベルとマーモンも仕事を任されたオレを睨んできやがるし。ボス――ザンザスの右腕はオレだからなぁ、テメーら羨ましいかぁ!?


「行ってくるぜぇ!」

「ああ。失敗しくさったらその頭、俺自ら真っ赤にしてやる」


 右手のワインを転がしながらドスを効かせるボス。だが、ボスが実際に隊員や幹部を殺ったことはねぇ……あったとしても障害が残らない程度の怪我だ。仲間を大事にする奴だってことをオレたちは十分知っている。これはあえて脅すことで気の弛みを封じたんだろう。本当にボスの一挙一動には恐れ入るばかりだぜぇ!

 会議室を出て部屋へ向かう。ボスの期待に応えねぇオレなんてありえねぇからなぁ。




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 ちゃんとコレ勘違いモノだよね!? 客観的に見て勘違いものだと判断できるかが不安(´・ω・`;)
2012/04/18


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