迷↑走→イ↓デ←アお試し版



 スペードという男の霊体に憑依していると気づいてから百年ちょっとが過ぎた。更に詳しく言うなら、今は五年前に拾った子供三人が「僕らはやっぱりマフィアが許せないんです! レッツ復讐!!」とマフィア界の乗っ取り&復讐を宣言してから二週間かそこらだ。お父さん見ててください、僕らは見事になしえてみせます!――と家を出ていった三人を見送るふりして着いていった。お父さんは心配なのだよ、初めてのお使い並みに。あいつらは俺が鍛えたからそこらへんの幻術士なら余裕で勝てるし、マフィアの中堅構成員くらいなら二秒で煉獄に送れる。だが相手はボンゴレなのだ、あのボンゴレ。あの馬鹿なのか天才なのか紙一重な奴の直系だ。不安になるのも仕方ないだろう?

 霊体で見ていたら、三人は善戦したもののボンゴレの冗談みたいな遺伝能力のせいで膝を突いた。可哀想に……あれって公式チートだろう? 主人公の敵は必ず負けるようにと宇宙意思ってか作者の意思が働いているんだ。


「くっ。千種、犬、すみません……僕のせいで」


 骸が血を吐くように悔しそうに言った。まあ三人の中で一番強いのは骸だから、倒されたことに一番責任を感じているのも骸だろう。それを否定する気は全くない。


「ねえリボーン、骸たちはどうなるの?」

「オレらはどうもしねーが、掟の番人は放っとかねーだろうな」


 冗談言うな、骸たちの公式的な犯罪はこれだけだ。掟の番人が「単なる抗争」の敗者を捕まえにくるものか! 馬鹿か!

 と、主人公とか赤ん坊教師とかを馬鹿にしてたからだろうか。消していた気配のほんの小さな揺らぎを感じたらしい赤ん坊が勢い良くこちらを見やった。うほっ良い感度。


「ツナ、身構えろ! コイツらにはボスがいやがるみてーだゾ!!」


 流石は世界一のガンマン。五厘にも満たない気配の漏れからオレの強さを推し測ったらしい。骸たちは当然回収してやらなきゃならないから現界するのはするのだが――ボンゴレな、面倒な記憶しかないんだが。





 パチパチというよりはポッポッと聞こえなくもない拍手の音が響いた。拍手をする本人の姿は見えない――まるで幽霊が拍手しているかのような。まさか、そんなはずがないよね。幽霊だなんて。


「流石は世界一のガンマン。私の気配に気付くとは……その名も張りぼてではないらしい」


 何ヵ所にもスピーカーがあるみたいに、二重三重の声が四方六方から聞こえる。やっぱりおばけ!?

 骸たちが目を見開いて身動ぎした。幻術使いの骸でさえ分からないんだから、お化けかも! 嫌だよ、そういうの苦手なんだよ。


「オレは最強の殺し屋だ。ガンマンじゃねぇゾ」


 リボーンは周囲に目を走らせながらそう言い返す――って、そんなのどっちでも良いよ!!


「あいやすまない、最強の殺し屋には既に当たりがあってね。彼は最強無敵の殺し屋だが銃は使えないのだ。君の誇りを傷付けるつもりは全くなかった」


 リボーンが眉間に皺を寄せる。


「――まあその男というのはもちろん、私なのだがね」


 そんな言葉と同時に現れたのは、骸と似た髪型の男の人だった。片眼鏡をかけて燕尾服を着てて、知的に見える。でもなんで燕尾服?


「オメーは!」

「そう。君の予想に間違いはない――君たちボンゴレが言うところの裏切り者にして、世界一の殺し屋だよ。フフ、驚いたかな?」


 演技かかった動作で両腕を広げた男にリボーンは唇を噛んでた。


「まだ生きてやがったのか、デイモン! あれから何年過ぎたと思ってやがる!?」


 そんなリボーンとは違って、骸たちは目を輝かせて彼を見上げてる。


「お父さん!」

「お父さん!?」


 骸の言葉に目を剥く。


「親とは子供の心配をする存在なのだよ骸。だが全く、お父さんは悲しい……お前たちは無謀だ」


 リボーンが睨み付けるのも気にせずに骸のお父さんは肩をすくめる。


「いきなりボンゴレでは失敗するのも当然だろう? せめてそうだね、トマゾあたりを支配してからにしなくてはできることもできなくなるよ。今回は良い勉強になったね、傲りは今まで積み上げたものを台無しにすると」

「は、はい……すみません、お父さん」

「ごめんなさいれす……」

「すみ、ません」


 しょんぼりとする骸たちに微笑む骸のお父さんは、髪型さえ気にしなかったら普通の人に見える。


「もしかしなくとも、こいつらはテメーが育てたのか」

「そうだが? ああ、讃辞以外は聞くつもりがないから言っても無駄だ。――この子たちはマフィアに人生を滅茶苦茶にされたのだよ。復讐をしたいと言うのは彼らの自由意思さ」


 ハンムラビ法典も言っている、目には目を歯には歯をと。ならばマフィアに平穏な人生を潰された人間はマフィアの未来を潰しても良いはずだと笑う骸のお父さん。優しそうなはずなのに、怖い。足が震えてぐらぐらした。


「……エストラーネオとボンゴレに繋がりはねぇ」

「そのようなこと、マフィアに関わる者なら誰もが知っているが?」

「はぐらかすな! テメーの手駒だろう、コイツらは!!」


 怒鳴るリボーン。全く話についていけないんだけど、どうやらこの人はリボーンとボンゴレの敵みたいだ。


「ヌフフ、何を勘違いしていると思えば……。ボンゴレも堕ちたものだ。思い込みは真実を隠してしまうということに気づかねば膿は溜まるばかりさ。――三人は一足先に帰りましょうか、私もすぐ追います」


 骸のお父さんが指を鳴らせば、骸や千種や犬の三人は霧に包まれて消えた。消えたァ!?


「瞬間移動!?」

「ハッハッハ、違うぞボンゴレ次代後継者候補。幻術の一つで三人を別の場所へ送っただけだ」


 骸のお父さんは片眼鏡を押し上げて微笑み、何もない空間に座った。


「そうだ、世界一のガンマン。さっきの答えをやろう。私は『生きている存在』だと人に伝えたことは一度もないのだ」


 言外に自分が死んでいると言った骸のお父さんに気が遠くなる。お、お化け……。


「一度自分の足元を見まわしたまえ、ボンゴレ。無知は罪だと私は思うのだ」


 パチリとウィンクして、骸のお父さんは消えてしまった。


「一体どういうことだ……?」


 リボーンの小さな声が、物音のしない廃墟に響いた。




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 ボンゴレちゃんと調べろよ、裏切り者違うwという話(´・ω・`)
2012/04/17

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