あの子と一緒2



 ひたすら走らされるという一次試験を終えた後、二次試験会場に着いた私達を待っていたのは正午にならないと試験が始まらないという事実だった。会場だろう建物からは、猛獣の鳴き声にも聞こえる腹の音が響く。腹の虫ってこんなに響くものだろうか? 確かブタラとか言ったか、試験官が特殊なのだろうけど。

 途中でストレス発散に行ったヒソカ少年を待つ間は、ヒソカ少年から指定された相手――ギタラクルの傍にいた。漫画だからああいうのを許容できたのだろう、現実で見ると気味が悪いと言うよりも恐ろしい。

 ギタラクルが私をギョロリと見下ろした。何か用があると言いたげなその目に頷いて、他の受験者の目がない場所へ移動する。


「君、念能力者?」


 自信のなさそうな口調だが、ギタラクルがそう思うのも仕方ない。私は戦闘要員ではなく治療や情報集めが主な仕事だから、念能力者だとばれないようにオーラをわざと垂れ流して一般人に擬態する必要がある。ハンター試験で一体何人の能力者がいるかは分らないが念には念をということだ。


「ああ。私は仕事柄一般人を装わなければならないからな、擬態だけは誰にも負けない自信がある」

「そう」


 ギタラクル――イルミは一つ頷くとそう返した。


「ヒソカとは長いの」

「さて、長いと言えば長いし短いと言えば短い。昔一週間ほど一緒に住んで、最近再会したから」

「へえ」


 イルミは興味深そうに私を見下ろす。


「ヒソカもベビーシッターなんてするんだね」


 イルミはどこをどう勘違いしたのか、ヒソカ少年が私のベビーシッターをしたと思ったらしい。実際のところは逆だが、言っても理解されないだろう。


「昔のヒソカしょ――ヒソカは大人しくて可愛い美少年だったが」

「あ、そう」


 興味がないのもあからさまに、イルミは放り投げるような返事をした。人とつるんだり群れたりしないヒソカ少年と行動を共にしている私に興味を持ったが、いくつか質問をして気がすんだというところか。


「ん」


 ヒソカ少年の気配が猛スピードでこちらへ向かっている。イルミは私に先んじてそれに気付いたらしく、顎でヒソカ少年の来る方向を指した。


「では」

「じゃーね」


 イルミはスルっとどこかへ歩き出した。まるでこの世に興味のあることなど一つもないような、そんな雰囲気がする。まあ、漫画を読む限り弟には興味があるみたいだから気のせいだろうが。

 私が会場前に戻ったちょうどその時、ヒソカ少年がレオリオを抱えて到着した。


「楽しかった?」

「ウン☆ 将来が楽しみな子も見つけたしね☆」


 木に凭れかけられたレオリオを見れば、原作でもそうだったが頬があり得ない程腫れていた。確かヒソカ少年が殴ったのだったか……怪我が治っていれば追及されるだろう。私は聖女ではないのだから、直してやる必要性は無い。

 ヒソカ少年の腕を掴んで扉の前へ移動する。原作が好きじゃなかったかと言えば好きだったが、ヒソカ少年よりも優先するかと言えば否だ。それに幻影旅団には私の養父と仲間がいるし、ウボォーの命を奪う予定のクラピカと仲良くなるつもりはない。

 腕時計を確認すれば、十二時まであと三十分だった。






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執筆チャットにて執筆。
2012/04/04

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