聖☆おちびさん12



 三百歳の誕生日を迎える、その晩。明日は誕生日パーティーだとワクワクしながらベッドに潜り込んだ私の夢に、呼んでもいないのに好本さんが現れた。


「お久しぶりです、ロード様」

「ええ、一体何年ぶりでしょうね。で、今日は一体どんな用ですか?」


 好本さんは折り目正しくお辞儀すると、早速とばかりに私を席に誘った。


「明日三百歳を迎えられるにあたり、ロード様の体が変わることになりました」

「は?」


 口をポカンと開けた私に構わず、好本さんは話を続けた。


「ロード様は神の娘であるという認識が、世界規模で信じられています。神族の中にも『ロードたんはロリ神様なんだよ』や『神の娘だから永遠にロリっ子なのさぁ、はぁぁん』という信仰が広がっています」

「ちょっと待って、それどう考えても信仰じゃないよね!」

「まあそれは気にしないことにして」

「気にしたいよ!?」

「気にしない気にしない」

「気にしたい気にしたい!!」

「まあ横に置いておきましょう、話が進みません」

「私が悪いみたいな言い様だねソレ!」


 好本さんはサラリと私の突っ込みをスルーし、説明を続ける。


「実はロードさまが二百歳を越えられる際にも『神族にしてしまえばどうか』という話が出たのですが、まだ二百歳は若すぎるとかまあいろいろな意見がございまして議題はお流れに。しかしロード様が二百九十歳になられた頃に話が再燃、七年ほどの議論の末にロード様の神族化が決まりました」

「突っ込みどころが多すぎてどこに突っ込めば良いのか分からないよ」

「主神のキーやん様も、ロード様が娘になることに『オッケー☆』許可を下されました」

「軽い! 軽すぎる!!」

「最後まで反対されていたタダオ様は『うるせぇこのロリコン、初恋の相手零歳児!』と罵られ撃沈」

「止めたげてよ!」

「執念で死後に神族へ転成されたアルビレオ氏はロード様親衛隊の隊長に就任」

「あの人死んだ後何してるのかと思えば!!」

「面白がったジョット様は副隊長に」

「ジョットさん!?」

「サイト様・ルイズ様夫妻はタダオ様・レイコ様夫妻と協力して『親衛隊の肉欲からロードちゃんを守る会』を設立」

「ネーミングセンス最悪!」

「このように、初期のお仲間が皆様神族として楽しくしておられます。というわけでロード様も細かいことは気にせず神族になりましょうね」

「タダオとレーコさんも神族になってますよ、だけで良かったんじゃないかなぁ! 一気になりたくなくなったんだけど!?」

「事実を知ってから神族になる方が心構えも違いますでしょう?」

「まあね!? でもなること決定なわけ!?」

「キーやん様が『カマン、マイドーター☆』と乗り気でいらっしゃるので断っても無理矢理ならされますね」

「軽い!」

「断っても意味がないですよ、皆さんやる気ですから、断っても意味がないですよ。大事なことなので二度言いました」


 好本さんこんな人だったっけ。


「――申し訳ありません。なにぶん私が育てた神族候補がここまで出世するとは思いもしませんでしたので、育ての親として感無量と申しましょうか」


 好本さんは眼鏡を押し上げると、少し顔に笑みを乗せた。


「地上で信仰を得て努力したのは貴女本人です。今までは私が一方的に呼びつける立場にありましたが、明日以降はロード様の好きな時に私を呼んでくださればいつでも参ります。夢の中限定で」

「夢の中、限定でですか」


 はっきり言って微妙。


「はい。ワンランクずつ出世していくのが一般的なのですが、神の娘になってしまったのでヒラ神族扱いはできません。それに地位に準じた力を得ることになりますから、まあ……」


 好本さんは言葉を濁し、しばらく視線をさまよわせた。


「まあ?」

「信仰されればされる程、力が強くなったり新しい能力を得たりします」

「へー……」


 それはまあ分からなくはない。時間の経過で神様の役割が変わってたりするし、力の方向性が変わったりするのもあり得るんだろう。


「それに加えて、お父様ということになるキーやん様の力の影響を受けます。つまり、当コンビニ購入によって既に持っている力+信仰で得る新たな力+キーやん様の力の一部というチートキャラになります」

「ちょ、ちょっと待って! それどこのテンプレ転生トリッパー?」

「テンプレではありませんが転生トリッパーじゃないですか」

「チートすぎるよ、っていうかこんなにいらないよ」

「どれか一つでも欠けると、親衛隊から襲われれば数に押し負けて花を散らすことになりますね」

「やっぱり力って無いよりは有る方が良いよね!」


 君子は豹変するんだよ。

 好本さんは眼鏡を押し上げると、神族になるのは分かりましたか、と念を押した。なりたくなくても、父親(予定)が乗り気で無理矢理でも神族にされてしまうのなら、私に尋ねる意味って無いよね。内心嫌々頷けば好本さんは満足そうに笑んだ。


「では、起きたら既に神族になっています。神族側も預言者達に神託を下しますので、数日後には全世界でロード様が神の娘であるということが改めて認知されるでしょう」

「なにその羞恥プレイ」

「周知プレイですが何か?」

「文面にならないと分からないネタは止めてください」

「メタ発言乙、とでも申しましょうか」

「好本さんいつものクールさを思い出してくださいテンションがおかしいです」


 こんなの好本さんじゃないよ、好本さんの皮を被った別人だよ。


「申し訳有りません。実はロード様三百歳を祝おうと、神族全体で一ヶ月前から毎晩祝杯を上げていまして、実は仕事に滞りが出るほどどんちゃん騒ぎをしています。そのせいか酒気が抜けていないかも」

「仕事してください」


 もしこんなのが神族だなんて言うなら、神族になりたくないよ……。














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 フリーダムな初代信者、そして好本さんがコワレた。
12/22.2011

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