聖☆おちびさん4



 アジトというか団体本部に帰った私を待っていたのは、ロリコンと、ロリコンと、ロリコンだった。アルビレオという名の好青年(の演技をした男)はロリコンの筆頭で、「生まれてくる場所を間違えていませんか」と訊ねた私に「幼女のいるところが私の居場所です、つまり、永遠の幼女である貴女のいる場所こそ私のいるべき場所」とドヤ顔で答えたどうしようもないロリコンだ。アルビレオとその同好の士が作った同人誌『えたぁなる☆ろりぃた』は半年に一度出すか出さないかという雑誌のくせして購読者が二千人を越えている。紙面の半分以上が私の日常生活についてや写真で埋められており、残りは読者から投稿されたロリ写真やエッセー、ロリがロリロリしてる漫画や小説で構成されている。一度見せてもらったけど、パラパラとめくっただけで返した。ついでに私に速読のスキルはない。

 聖女教本部は兄がククルーマウンテンを購入する前に使っていた屋敷を流用しているため隠し部屋や武器庫があってちょっと物騒だけど、部屋数が多いから便利に使わせてもらってる。三階には私の部屋が三つほどあって(誘拐される可能性があるから毎日寝る部屋を変えている)、残りの部屋には念を覚えてる肉体派構成員が寝泊まりしている。二階は幹部の仕事部屋と信者の名簿やらなんやらの書類が置かれてて、一階は入信受付と病人・怪我人が休憩したり宿泊したりする場所になってる。一階の大広間に前世で見覚えがある病院用パイプベッドがずらりと並べられているのを見たときはから笑いしかでなかった。


「ただいま」

「いまただ」

「タダオ古い」

「言うな」


 長距離を一瞬で移動できる発の持ち主であるマリーさんは私たちの会話に微笑ましそうに笑うと、手に持った天幕や簡易ベッドの部品を預けるため先に行ってしまった。ルシオラちゃんとレーコさんは後ろで物騒な会話をしていてこっちの話に混ざりそうにないし、いつ見ても巨大な屋敷の前でなんとなく立ち呆ける。

 屋敷の出入りはかなり制限されている。重病人・重傷人しか受付に入れてもらえないし、そのうえ私以外の治癒の発を持つ人たちにはどうしようもできなかった場合のみ一階の宿泊スペースに入ることができる。そこまでしなくても……という意見もあがったけど、私以外の治癒能力者は私ほど問答無用な治癒力を持っているわけじゃない。私はかなり結構なブランドなのだ。

 タダオに連れられて受付に向かえば笑顔で迎え入れられた。触れるだけで本人確認ができるという通称「人型認証システム」の一人・アルビレオさんが私の手を包み込み、そのままニギニギする。気色悪い。


「お帰りなさいませ、ロード様」

「ええ、ただいま帰りました。――早く手を離してくれませんか」

「あと五分お待ちください、現在確認中ですので」

「早よ放したれ」


 タダオがアルビレオさんの頭にチョップを落とし、舌打ちと共にアルビレオさんは私の手を放す。タダオは確認を済ませるや、難病の治癒とアルビレオさんのせいでちょっと疲れ気味の私を抱えあげて先へ進んだ。


「歩けます、タダオ」

「嘘こきな、顔が疲れたーっちゅーとる」

「うーん」


 どうやらバレバレだったらしい。仕方なく抱えられたまま三階へ上がり、階段から一番近い部屋のベッドに放り投げられた。優しく体重を受け止めるベッドに体中の疲労感が滲み出てくるように感じられた。


「ほら、寝。疲れ取らんと今度の出張が辛いで」

「はーい」


 私の出張は三四日に一度か二度で人が思うほど多くない。数人いる長距離瞬間移動能力者と教団で次点の治癒能力者が私に先行して向かい、彼らにはどうしようもない場合のみ私が行くのだ。幼女がくると信じていた人たちが「失望した!」と嘆くことも多いらしい。そう言われても困るんだけど。

 だんだんと瞼が落ちて、数分とせずに私は眠りに落ちた。














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 時々こうやって短くなったり長くなったり
11/15.2011

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