白い悪魔の子2



 俺がイリヤの容姿にしたのには理由がある。この世界では女も婆娑羅者なら戦うが、やはり女と見ると皆油断してくれるのだ。とりあえず戦いの激しい世界に送られることは聞いて知った俺は、女にはなりたくないけど女に見える、つまり男の娘的な容姿になろうと考えた。信頼できる友人にだけしか男であるとばらさなければ、俺の見た目はまんまイリヤだ――相手は女子供と見て油断する。まあ、この世界には濃姫とかお市ちゃんとか鶴姫とかいつきちゃんがいるからなぁ……必ず油断してくれるとは限らないんだけどな。

 今俺は山の中で一人暮らし――サバイバル生活を送っている。話し相手はいないがそれは村でも同じことだったので平気だ。時々獣が襲いかかってくるがそこは闇の婆娑羅で生命力を奪わせて頂いた。ごちそうさまでした。そして現在は川辺で食事中だったりする。婆娑羅での食事で足りないというわけじゃないが、このままだと消化器の機能が低下しそうな気がしたから口からも物を食べようと思ったわけだ。

 婆娑羅で捕まえた魚を枝に刺し、これまた婆娑羅で原始的な摩擦熱による着火を頑張って魚を焼いた。パチパチと爆ぜる火を見ながらぼんやりと考える。この火は消せないな……毎日棒で幹を削るのは面倒くさいし。てか、闇の婆娑羅って過去を覗いたり開け根の国☆したりできる、応用の効く能力だったよな。四次元ポケット化できないかな……王の財宝《ゲート・オブ・バビロン》みたいなの。


「やってみるか」


 中で腐り始めたけど取り出せない――なんて恐ろしいことにはなってほしくないので、影の中に小石を落とす。表面には炭で適当な文字を書いているから間違うことはない。

 膨らんだ影――闇? の中にチャポンと落ちていった石が、下の河原の石とぶつかる音はしないから影の中に取り込まれたんだろう。


「出て来い出て来い……」


 影の中に手を突っ込み念じてみる。と、手の中にずっしりと重たい物体の感触がした。手を抜き出せばさっき入れたばかりの小石だった。成功!

 行ったら行きっぱなしのお市ちゃんと違い、入れたり戻したりできるというのは便利だ。もし生き物がこの中に入れるならもっと便利になるだろう。オレ自身が入って逃げるとか、やり過ごすとか。

 そうと分れば生き物だ。そこらへんのリスとか色々捕まえて実験しよう。


「なんか楽しくなってきたな」


 話し相手もいないためずっと独り言だが、少しも空しいとは思わない。話す相手がいなくても口に出したいことがあって当然だろ。――ああ、この世界も楽しくなってきた。











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暗い話になりそうな……悪ノPの曲を作業妨害BGMに使ったのが悪かったのかな(間違いなく原因)
07/21.2011

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